バカゲー迷言録
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 「じどう」



 『里見の謎』を購入してゲームを始めると(何気なく書いているが、これだけでも相当アレな行為である)、

 まず最初に「あたらしくはじめる」「まえのつづきをやる」「おんがく せってい」の三つのメニューが表示されるはずだ。

ここで「おんがく せってい」を選ぶとステレオかモノラルかを選択できるが、そのとたん、なぜかBGMが消えてしまうので注意しよう。(つまり確認不可能)

 とりあえず「あたらしくはじめる」を選ぶと、名前入力画面になる。ここまでは世間一般のRPGと何ら変わらない。
  (背景で蠢いている不気味なグラフィックは見なかったことにする)

 問題はここからだ。名前入力の際に「じどう」というコマンドがあるのである。




 マニュアルによると、


名前を変えたいのだけれど、決まらない場合は「じどう」を選ぶと、自動的に一文字づつ設定します。


 と書いてある。これを見ただけでバカゲーのオーラを感じられるようになればあなたも一流だ。

 自動的に一文字づつ、である。決して、あらかじめ用意されたそれっぽい名前の中から選んでくれるわけではないのだ。例として、試しにやってみよう。

  ふぐぅむち。

・・・何の呪文だ、それは。

 こんなランダム・システムで生成されるモノと言えば、「ょーぢはの」「ずなぐもい」「ぅくめえづ」のように人名どころか世界中のどの言語をあたっても該当しないような語ばかりであり、

そもそも発音すら不可能なものも多い。

 ついでに言っておくと、それに拍車をかけているのが

入力文字表の中にある「ゐ」「ゑ」の存在だ。




 面白半分にこんな名前でプレイを始める人がいたとしても、開始直後の


 ょーぢはの
「どうした ゐたけのほ!」



 などというメッセージを見た瞬間、間違いなくプレイヤーの90%はリセットボタンを押すだろう。

もちろん、残りの10%の人が押すのは電源スイッチである。



 ・・・・しかしこの「じどう」機能、

 “ゆめわか”“ようすけ”“ラブリー”(犬)という素薔薇しい初期設定の名前に対し、

投げやり気味に皮肉を込めた、プログラマーのささやかな反抗と とれなくもない。





 (付記)

などと書きながらも、最近私は新しいゲームを買ってくるとまず『里見の謎』を起動するのが習慣になってしまった。もちろん主人公の名前を「じどう」で決定するためである。

 というわけで、私のFF8の主人公はすでにめゃづーぢという名前になることが確定している。

 例によって、ヒロインと恋愛したりチョコボに乗ったり記憶を失ったり自分を探したりやおい同人誌のネタにされたりしながら、 頑張って世界を救ってくれたまえ、めゃづーぢ君。期待しているぞ。






 「あなたの好みのタイプはどっち?」



 『里見の謎』

 名前入力が完了すると、いきなりこんな唐突な質問が。



 イズミ・・・
 16才。一見おとなしそうだが
 好奇心旺盛。
 エスパーの潜在能力あり。

 千夜(さや)・・・
 14才。城で若君役をしている
 家老の娘。まだ少女だが、
 神秘的な魅力がある。




 この説明と、例の破壊力抜群のグラフィックを見る限り

  「どっちもイヤ」

という回答しか思い浮かばないが、そうも行かないのがツライところだ。



 しかも、ゲームを進めていくとこの説明文が全くあてにならないことがわかる。

 特に、「一見おとなしそう」なイズミは、初対面でいきなり

「ちょっとあんた! 私に何の挨拶もないでタカタカタカタカ、キーボード叩いてんじゃないよっ!」

 と因縁をふっかけてきたりするのだが。


 もう一方の千夜も、初めて会ったときに

トランス状態であっちの世界にイッちゃっているのを「神秘的な魅力」だと

言っているのなら、ぜひとも考え直していただきたいものだ。



 さて、何のためにこのような質問があるのかと言うと、 最終的なヒロインを決定するためである。

 FF7の“好感度”など歯牙にもかけぬ斬新なシステム!!

目からウロコが落ちるとはまさにこのことだ。(同義語:開いた口がふさがらない)



 もっとも、実を言うと終盤でもう一度ヒロインを選択する場面がある。

 もちろん、最初に何と答えようと、そこでの決定が優先されるわけだ。

 つまり冒頭のこの質問はほとんど無意味ということである。

 ただ、いちおうここでの答によってOPのナレーションのキャラが変わる。・・・が、イズミも千夜も演じているのは同一人物。

 声優というのは一人で様々なキャラを演じ分けられるからこそプロなのであるが、

× ど素人  声優初挑戦島ひろ子さんの演技力を確かめてみるのもいいかもしれない。








 「首都、襲来」



 SSのシミュレーションRPG『ファンキー・ファンタジー』より。何がファンキーかと言うと、

  メーカーが吉本興行。

 これまでも吉本の芸人たちを主人公にしたゲームはいくつかあったが、この『ファンキー・ファンタジー』は、それらとはちと毛色が違う。

 ゲーム本編がファンタジーとして独自の世界観を持っているところに、むりやり吉本タレントをブチ込んでいるのである。

 たとえば、オープニングストーリーはこんな感じだ。


 平和なヨシモール王国にある日ロクナ帝国が侵攻。

 かつてない巨大モンスター達の攻撃によって、王国は崩壊した。


 国王はみずからの命とひきかえに若き王女バニーを
二人の親衛隊員と共に城から脱出させた。

 そして最後に敵の背後に失われし職業、操獣術士の存在がある事と、
王女はその操獣術士の血をひく養女だと語った。

 王女バニーは親衛隊員のリキ、オルターと共に、苦難の旅に出た・・・。


 ----「ごく普通の村娘が実は王家の血をひく養女だった」という話は腐るほどある。

しかしその逆というのは非常に斬新だ。操獣術士の血だか何だか知らないが、

それなら王家復興の大義などすでに途絶えきっているのではないか?

 それはさておくとしても、このストーリーを読んだだけでは、このゲームに吉本興業が関係していることなど全くわからない。

 ゲームシステムも、カードバトルを取り入れたSLGであり、技術的にはかなり粗いものの独立したゲームとして見てもいいのではないかと思う。




 では、なぜ吉本なのか?

 前述の、王女の親衛隊員二人がこのゲームの主人公格なのだが、彼らには“冷気の龍”リキ・サカキ“炎の守護神”オルター・キーヴといういかにもファンタジーっぽい名前が付いている。

 しかし顔はナインティナインの矢部と岡村。

 他社の有名ゲームからパクったような(と言うか、本当にパクってる)CGキャラに
実写の矢部と岡村の顔だけをそのまま合成している。力技もここまでいくと見事だ。

 他にも悪の皇帝が坂田利夫だったり、武器屋の店主が大助・花子の宮川大助だったり、仲間になる騎士がチャーリー浜だったりというドリームキャスト。(他意はありません)

 もちろんそれぞれにローレンだのチョーサーだのといったファンタジー名が付いている。

 キャラゲーと呼ばれるものは数あれど、そのキャラを無視してゲーム本体がここまで独自の自己主張をしているゲームは本作ぐらいではなかろうか。

 何と言っても最初のマップのタイトルが『第壱話 首都、襲来』なのである。

 (もちろん首都が縦書き、襲来が横書きの明朝体という例のアレ

 その後も『第弐話 コボルド大地に立つ』『第参話 王女が見た流星』
明らかに吉本とは方向性の異なるギャグが目立つ。



 推測だが、どうもこのソフト、小さなゲーム開発会社が作りかけていたものを吉本興行が買い取って、強引にタレントの顔写真だけを詰め込んで売りに出したように思えてならない。何ともチグハグなゲームだ。

 というわけで、感想。

 観光地によくある、顔だけ出して写真を撮る立看板を思い出しました。








 「 to be continued...」



 このネタは、そのあまりの素薔薇しさゆえに、ここで取り上げるべきかどうか迷っていた。

「こんな面白いものは、一人一人が自分の目で確かめたほうが良いのではないか」 ということである。

 しかしながらバカゲーというものは、購入するにもクリアするにもかなりのリスクを伴うものだ。ならば、普通のゲームとは違い多少のネタばらしも必要なのではないか? そう考え、結局この迷言録に加えることにした次第である。

 「 to be continued ... 」のどこが迷言なのかとお思いの読者の皆様、もうしばらくお待ちいただきたい。
2行下を読んだ時点で心の底から納得がいくはずだ。

 そう、この迷言を世に送り出したゲームとは、


  『 里 見 の 謎 』。



 このゲームの素薔薇シズムの片鱗については、これまで私も多少は語ってきた。


 今では失われた古代の技術(十年ぐらい前の)を駆使して作られたグラフィックとシステム、

そして小学生が8月31日に書き上げた作文のようなシナリオを堪え忍び・・・・

 島ひろ子の歌が流れる中、救いようがないほどダサいラスボスを倒して

「これでようやく解放される・・・・」と万感の想いを噛みしめた瞬間、


「 to be continued ... 」

(訳:この程度ですむと思うなよ・・・!


 ----この衝撃は体験した人にしか伝わらないだろう。いうなれば、

 最後に“絶望”が残るパンドラの箱。



 このゲームを10万本売れと言われたらスクウェアやSCEIの広報・営業でさえ頭を抱えると思うが、


 (事実、SCEIは今日に至るまでこのゲームの不良在庫に関して何の手も打っていない。
  販売本数増加のためにはとりあえず、オススメシールをひっぱがして、
  パッケージイラストにモザイクをかける ぐらいの事は強行したほうがいいだろう)


 そんな状況で最初から続編の発売を予定していたとは、まるで

 第一作がエライことになってしまったのに、懲りずに『10101 "WILL" The Starship』とかいうバカゲーを出してしまう某会社と同じぐらいイイ度胸である。・・・あ、ゴメン、これもサンテックジャパンのことだ。

 しかしそのサンテックジャパンが生死不明という今、続編が出る可能性は限りなく低い。

そのため識者のあいだでは、

「このゲームは、あの『 to be continued ... 』という精神攻撃をプレイヤーの脳髄に叩き込むことこそが最大の主題であり、ストーリー本編と思われていた部分はただの前フリにすぎない」

 という説が有力である。

 




 

 

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