騒(奏)楽都市OSAKA



【印刷所泣かせの「騒(奏)」】


 TENKYの皆様がご飯を食べながら作った『騒(奏)楽都市OSAKA』。その体験版を入手した。

 TENKYの方も見るかもしれない(と言うか絶対見てる)この場所で、どのようにレビューすべきかどうか迷ったが、

 このサイトのように本来のターゲットや固定ファンから少し外れた層の意見というのもなかなか貴重だと思うので、遠慮ナシでやることにした。

 なお、ゲームに合わせて一人称は「俺」にする。



 知ってる人は知ってると思うが、本当はこの作品のタイトルの一文字目は、「騒」という文字の上に「奏」を重ねた創作漢字。

 すでにゲーム誌でもこの字を使うのをあきらめたらしく、どこを見ても「騒(奏)」で統一されだしたようだ。

 そりゃそうだよ。あまり変な字を作ると印刷所の人が困るんだぞ。こんな風に。



「おい、作業は順調か?」

「ハイ! ・・・でもいいんですか、主任。
明日は田舎で娘さんの結婚式があって、今夜の新幹線に乗らなきゃ間に合わないって・・・。
単身赴任でただでさえロクに顔も合わせてないんだから、遅れるワケにはいかないって言ってたでしょ。今日はもう帰ったほうが・・・」

「バカヤロウ! この雑誌はな、日本のゲーム文化を支えるクリエイターたちが精根こめてつくったソフトを紹介するために、同じく前途ある編集者やライターたちが睡眠時間と体力を削ってつくったものなんだ。ここで俺たちが中途半端な仕事をしてどうする!
 ・・・それに、この調子なら何とかギリギリ間に合いそうだ」

「しゅ、主任! このページを見てください! こんな活字、どこにもありませんよ!
これじゃあ、ここだけ別工程であとから文字を作って入れるしかないです!
 でも、そうなると、時間が・・・・」

「・・・くっ・・・許してくれ、明子ぉ・・・!」



 さて、嫌がらせコントが終わったところで、本題。

 このゲームの舞台は近未来。しかしゲームを立ちあげるといきなり、


 1983年 近畿動乱により、東西分裂

 1996年 和解動乱により、再び東西統合


・・・という、何者かに歪められた歴史が表示される。つまり、あくまで現実世界とは異なるパラレルワールドだということ。

 で、途中まで説明がないのだが(たぶん取説に書かれるんだろうけど)この世界では何らかの理由で電波衛星のたぐいが使用できなくなっており、広域への電波放送が不可能になっている。

 ちなみにこの設定、偶然にもFF8と同じ。くやしがってるだろうなぁ、作者さん。

さて。そんな状況の中、大阪に巨大な電波塔BABELが建設されることになった。こいつを使えば、地上からでも全世界に電波を届かせられるというスグレもの。

 ところがこのBABELのスポンサーは、何を思ったかネット上でのメディア競争に勝利した学生集団に、BABELの使用権を与えると発表。

 要するに、数ヶ月に渡るこのコンテストに勝利することがゲームの目的なワケだ。

 その勝負の内容も、活字・映像・音声などの分野で、とにかく自分のところのページに人を集めればOKという、実にわかりやすいもの。



 東京からこのコンテストに参加するために転校してきた主人公は、さっそく広報委員という地位を与えられるのだった。・・・地位といっても、具体的に与えられたのは汚い部室とパソコンと仲間3名だけだけど。

 この仲間3名は、リストの中から選ぶことができるのだが(他の学校の生徒でもいいらしい。高校の部活と大学のサークルを合わせたようなもの)、

 登場するキャラクターは、ウィザードリィでいえば戦士・戦士・僧侶・魔法使い・盗賊・ビショップ。

 つまり、ショートカットの女教師・眼鏡っ子・男まさりの先輩・元気なポニーテール娘・金髪美少女・幼なじみというギャルゲー基本パーティーだ。

(いちおう学園ものだし恋愛がテーマでもないので、巫女さん・看護婦・メイド・妹といったマニアックな上級職キャラはいません)

 実際は男性キャラも仲間にできるのだが、この体験版では男は選択できなくなっているあたりが実にいさぎよくてイイ感じだ。





【眼鏡っ子】


 俺は以前から、RPGやSLGとかいったジャンル分けとはまた別に、

「空間型ゲーム」「時間型ゲーム」という分類を考えている。

 前者は、普通のRPGやアクションのように、マップを移動することによりイベントや戦闘が発生するもの。後者は育成系SLGのように、スケジュールに従ってゲームが進行し、その過程でイベントが発生するもの。

 で、この『OSAKA』は典型的な「時間型ゲーム」。  毎日午前中は授業を受け、放課後は仲間たちに指示を出してネタを集めて来させ、一週間ごとに新聞の形に編集するというもの。新聞といってもネット上のことなので、実際はちょっとしたホームページのようなものと思った方がわかりやすいかも。

 そしてそこに時折イベントが挿入されるのである。

 前にも書いたが、キャラのグラフィックは、決して下手ではないけどちょっとクセのある感じ。俺はCGにはあまり詳しくないのだが、線のタッチを太くし陰影を強調することによって色数を減らし、データ容量を小さくしているようだ。

 そのおかげで、画面いっぱいのグラフィックがほとんどアクセスなしでシパシパと切り替わるのは、なかなか爽快。

 さて前述の眼鏡っ子、名前を九条 句刻(くぎり)というのだが、下校時や昼休みに、スライムのように頻繁にエンカウントしてくる。

 そのたびに様々なポーズや表情の絵が表示され、「この子を好きになれ〜」という、開発者の強い暗示が画面から発せられているかのようだ。

 そして、そのあまりに強烈な思念に思わず屈してしまいそうになる俺。

 やめてくれー! 俺は「眼鏡っ子」という呼称はアラレちゃんにしか認めないんだぁぁ!

 それはともかく、下校時にエンカウントした際に彼女は、同じく仲間となった姉・九条文音のことについて教えてくれた。

 文音はなんと、九条家が代々受け継いできた大阪守護役なのだそうだ。何ですかそれ?

「言霊を物理変化させる力を持ち・・・・一人で一個軍の戦力です

 ・・・・・・。いや俺、新聞つくりたいだけなんですけど。

 なんだかどんどんバイオレンスな方向に進んでいくストーリー。その後、図書室で司書のお姉さんと握手して指の関節をはずされたり(関節技の達人だそうだ)、購買部で武器や防具を買ったりする。

 この体験版には入っていないのだが、なんでもライバルが拾ってきた特ダネをバトルで奪い取ったりできるらしい。発想がまるでクッキングファ(略)。

 このままでは、このゲームが眼鏡っ子とバイオレンスだけのゲームと思われてしまうので、その姉のほうのイベントも紹介してみよう。

 夜。主人公が学生寮の自室で寝ていると、ドアがノックされる。

 開けてみるとそこには、眼鏡っ子の姉の文音がいた。


 深夜、少年の部屋を訪れる少女。これからいったいどんな展開が・・・?

 文音は「腹が減った」と言うなり、主人公の部屋の冷蔵庫をあさりはじめる。そして食料を持って逃走。


 ・・・TENKYの皆さん。このイベントで何を伝えたかったのですか。このイベントがゲームにどう影響してくるのですか。教えてください。







【体験版、総評】


 名前や設定を聞いていると、ずいぶん突飛な作品のように思えるこの『OSAKA』。しかし中身はかなりしっかりした作りとなっている。好みはちょっと分かれそうだがテキストも面白い。

 そのわりに、主人公が起きるたびにトイレの水洗の効果音が毎朝流れたり、ヘンな部分も多い。なんとも奇妙な味わいのあるソフトだ。



 体験版をプレイして目についた欠点を挙げるなら、

 主人公は指示を出すだけで自分でネタ探しをしたりするワケではないので、やや作業が地味であること、

 最終的にどんなネタを拾ってくるかは運に任せるしかなく、最初はどんな紙面作りをすればいいのかなかなか見えてこないこと、

 主人公の独白が多く、たまにウザったいことぐらいだろうか。



 ただ、イベント面ではいろいろと複雑な展開があるようなので、そのへんがこういった欠点を裏打ちしてくれるかもしれない。

 あと、こういう「時間型」SLGは、一週ごとの結果をやり直すことが出来ず、そのまま時間が進行していくため、必然的に何度も最初からプレイすることになるものだ。

 そのへんの、繰り返しプレイを楽しむための仕掛けがどれぐらい施されているかが、製品版のポイントになるだろう。



 ちなみにこの体験版。

 ゲーム開始後一週間の最初の部数勝負で、俺はライバルの長髪美形ひきいるチームに見事に負けた。

 やっぱり一面トップが「年中無休の焼きイモ屋!」じゃダメだよなぁ。



(製品版買ったら続くかも