騒(奏)楽都市OSAKA
『その2』



  ■デフォルトが「てんきー」?■


 製品版、ゲットだぜ! ということで続き。

 ちなみに入手方法は秘密だが、何でも言ってみるもんだ。ほんの冗談だったのに。

 ポリアンナの「よかった探し」じゃないけれども、俺は金と時間を費やすからには、「あぁ楽しかった」と思ってゲームをしたい。

 この『OSAKA』は、いつも取り上げているバカゲーたちとは若干感じが違うので、ちょっと普段のレビューとは趣が異なるが、いろんな方向からそのゲームの魅力を引き出そうとしてみるという姿勢は同じだ。

 ・・・別にタダで貰ったから肩入れしているワケじゃないぞ。



 ではさっそく初めからゲーム開始。

 ・・・てっきり体験版だけかと思っていたのに、製品版でも主人公のデフォルト名が開発者の名前だ。

 いきなりこれはちょっとどうかと思うが、別の見方をすれば、デフォルトになんぞ頼らず、自分で名前を付けろということかもしれない。

 などと考えつつ、名前入力。

 名は康介、姓は越前。ニックネームはもちろんコンバット越前。

 所属団体の名前はエコールで、新聞名は『週刊 ECOLE』に決定! もう変えられません。

 三人の仲間については、例の眼鏡っ子とその姉に加え、今度は岩井参仁という男性キャラを選択してみる。なぜかと言うと、高校時代、新聞部に「岩井」っていう先輩がいたから。どうでもいいけど。



 まずはこれから活動をともにすることになる主人公+3名の顔合わせ。

 眼鏡っ子の姉で大阪守護役の九条 文音(くじょう・あやね)先輩がいきなり部室の掃除を拒否。

 初手からこのコンバット越前にたてつくとはイイ度胸だ・・・などと思うも、相手は「一人で一個軍の戦力」なので口には出さない。

 すると、眼鏡っ子(九条 句刻)がフォローを入れる。


句刻「すみません、姉は掃除と洗濯と料理と勉強と人付き合いが苦手なんです」

越前「・・・ぜんぶ苦手なんじゃないかソレ」


いいツッコミだ主人公。


文音「おう、句刻もここで仕事か?」

越前「二人は知り合いなんですか?」


 さっき「姉は」って言ってただろ。話をちゃんと聞け主人公。

 とまあ色々あったが、いよいよ我らがエコールも活動開始。

 いざプレイを始めてまず驚いたのは、前に指摘した体験版の欠点について、ほとんどフォローされていること。

 確かに作業自体は単調なことに変わりないのだが、そのうちプレイのコツが見えてくると、どんな指示を出せばいいのかわかるようになる。

 主人公自身は取材は出来ないが、取材ポイントを吟味し、ふさわしい人材を選んで派遣するなど、考えなければならないことは多い。その読みが当たって編集員が特ダネを取ってきてくれたりすると、なかなか嬉しい。

 それにこのゲーム、総監督である川上稔氏が自ら公言しているように、「ダラダラしたプレイ」にこそ味があったりするのだ。慣れて来るとなかなかハマる。

 もっとも、「ダラダラ」と言っても、ゲーム中のスケジュールはなかなかシビアで、メンバーが無事に記事を持ってきてくれるか、かなりヤキモキさせられることも多い。

 〆切間際の編集さんの気持ちが少しわかった。ごめんなさい。




  ■日常に生きるということ■


 そして、体験版では充分に味わえなかった大量のイベント。

 声優陣や表面のグラフィックや前歴だけを見て単なるギャルゲーだとナメてかかると、思いっきり肩すかしを食ったあげくに転ばされてダウン攻撃、みたいな目にあうので注意。シナリオは独特で、見た目よりずっと重い。


 己の“言葉”を持たない者。言葉を忘れてしまった者。言葉を隠す者。言葉を捜す者。言葉を聴こうとする者、伝えようとする者・・・・。

 自分のせいで事故にあってしまった幼なじみとか、姉妹の微妙な心情とかいったようなドラマが展開されることになる。

 だがしかし、ごく普通のゲームにありがちな「お互いツライ過去を背負ってたりなんかするけど、みんなで仲良く助け合って正義の使命のために頑張ろうよ!」みたいな人間関係は、このゲームには存在しない。

 それぞれ思う事は胸に秘めつつ、ただ「目的が一緒」というだけで行動を共にする。でもそれが不思議と居心地がいい。

 こんな陳腐な表現は使いたくないけど、「いまどきの学生」の生活をここまで的確に再現したゲームは他にないんじゃないだろうか。




  ■『OSAKA』と雑誌評価■


 あまりイベントについて詳しく書くとネタばれになるので、他の要素についても少し。

 まず音楽。BGMは全てクラシックのアレンジだ。

 こういうものはすでに著作権が切れており、金を払わずにすむという寸法。・・・いや、理由はそれだけじゃないんだろうけど。

 オープニングの『展覧会の絵・プロムナード』あたりは、ちょっとゲームのオープニングとして使うには弱いかな、という気はするものの、こういう新しい試みは評価したいところ。

 あ、著作権と言えば、もし仮にいま小室某を暗殺したりすれば、50年後には彼の曲が使い放題になるわけか。誰かゲーム音楽界の未来のためにチャレンジしてみませんか?



 次にグラフィック。これは体験版と同じだが、もうこの絵柄にもすっかり慣れた。

 さらに、攻略本で読んだところによると、眼鏡っ子は背が低いので、常に主人公を見上げるようなアングルで描いているとのこと。こういう細かいこだわりには、グッときてしまう。

 大会社が大人数で作っているようなソフトよりも、小さな会社でワイワイ言いながら作ったソフトのほうが、カラーがはっきり出ていて俺は好きだ。

 あまり悪い部分でばかり引き合いに出しては失礼なので名前は伏せておくが、いくらポリゴンがリアルだろうと、あの能面のようなキャラクターに比べれば、くるくる表情が変わるアニメ絵のほうがよっぽど人間らしいと思う。作品名は出さないが、もう8作目なのにねぇ。



 それはさておき、このぐらいで雑誌のレビューに「グラフィックが見にくい」などと書くようでは、ちゃんとプレイしていないことを白状しているようなものだ。

 ライターというものは規定の文章量の95%ぐらいは何が何でも埋めなければならないという宿命を背負っていて、そのゲームの良いところを見つけて上手く文章をふくらませることが出来なければ、当然あとの残りは悪口で埋めるということになりますな。このあたりが、現在の駄目駄目レビューを蔓延させる要因となっているのではないかと。

 ついでに本作が受けたレビューの中に「大阪弁がアヤシイ」というのがあった。

 これに対して公式ホームページの日記では、


「これはたぶん叶 綾(かのう・あや)先生のことだと思いますが、彼女のイントネーションが普通の大阪弁と違うのは、彼女が教師という立場で喋っているからであり、そんなことも見抜けないくせに偉そうにレビュアーを気取ってんじゃねぇよタコが。やんのかコラ」


 というような内容のことが、もう少し柔らかい口調で書かれていたりした。

 だが俺がプレイしてみたところ、問題はイントネーションのことではないと思う。ただ単に、標準語キャラも含め登場人物全員喋りかたがアヤシイだけの話。




  ■個性派投手■


 ・・・と、レビュアーの悪口をいろいろ書いてしまったが、真剣にプレイしてもらえないというのはつまり、「スタート直後からユーザーをゲームに引き込む配慮が足りない」ということでもあるから、あまりレビュアーばかりを責めるわけにもいかない。

 とにかくこの作品、『タイトルが読めない』に始まって、どうにも取っ付きにくい部分が多いのだ。特に、いきなり大量の専門用語が出てきたりする割に、肝心の世界観の重要な部分(学生たちは一種の自治体制を持っている、とか)がなかなか見えてこないので戸惑う。

 それと言うのも、実はこの作品は“都市シリーズ”と呼ばれる一連の小説作品(電撃文庫・川上稔)を背景としているからである。

 なまじ現実と地名などが重複しているだけに、ごく普通の現代世界かと思ってプレイしていると余計に混乱する。

 これからプレイする方は、完全な異世界が舞台だと思ってかかったほうがいいだろう。




   豪速球でユーザーの心を射止めるようなタイプを名作ソフトとするならば。

 本作はどこをとっても微妙に相手のストライクゾーンをはずしてくるため、打ちに行くと必ずファールになる。だからつい延々と打席に立ちつづけてしまう。

 その辺が、俺のようなヒネくれたゲーマーにはかえって味わい深く、楽しい。自分の偏ったバッティングフォームに気付かされたりもする。

 ・・・最初から見向きもしないユーザーにはそのまんまフォアボールで終わりなんだけど。

「オレ様は萌え萌え絶好球にしか狙わないゼ!」とかいうギャルゲーマーは手を出さないほうが無難。

 それなのに、(俺も含めて)周囲からはギャルゲーとしか思われなかったのが、このゲームの最大の不幸かもしれない。



(続く)



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