前ページに引き続き、「クローン人間ブルース・リー 怒りのスリードラゴン」の紹介。
 まずは復習の意味もかねて、このあたりで各クローン人間たちのスペックを見ていこうと思う。



ブルース・ワン
演:ドラゴン・リー
(Dragon Lee)

 そこはかとなくブルース・リーに似ているような気がしなくもないドラゴン・リー演じるブルース・ワン。 それもそのはず、上の画像は一番ブルースリーに似ているように見える場面を持ってきたのだから。
 彼の場合、少しアゴを引き気味にした状態で斜め60度程度の場所 から見ると、ブルース・リー風に 見えるようになる。しかし、真正面から見ると誰だかわからなくなるのが辛い。
 また、偽ブルース・リーにしてはマッチョすぎで、その影響からか動作が遅い。



ブルース・ツー
演:ブルース・リ
(Bruce Le)

 辛い。これは辛い。
 見れば見るほどブルース・リーというよりも間寛平。
 それでいて俳優の名前が ブルース・リ なのだから、たまらない。

 しかしブルース・ワンと同じく、彼にもフォローできる点が存在していることは幸いだ(何が?)。 彼はブルース・ワンに比べて細身で筋肉質なのでブルース・リーに体格が近く、さらに3人の中では(あくまでも3人の 中では!)アクションに抜群の切れがある。そして、ブルース・リーのトレードマークであるところの怪鳥音も 比較的似ている…ような気がする。

 つまり、首から下だけならブルース・リーに似ている ことになる。



ブルース・スリー
演:ブルース・ライ
(Bruce Lai)


 残念なことに、ブルース・スリーには前二者のようにフォローできる箇所が一つも無い。
動きはクソ遅い。回し蹴りをすれば足がふらつく。怪鳥音もヘボい。

 というか、お前、誰だよ?



 おさらいはこのくらいにして、本編の物語に話を戻そう。

〜ミッション1 悪徳映画プロヂューサー始末せよ〜
 報告によると、映画プロデューサーのチャイ・ロウは自分の映画会社を隠れ蓑にして金の密売を行っているという。 彼の制作するカンフー映画に新人俳優としてもぐり込み、その悪事を暴け!



 まずは、以上のような命令がブルース・ワンに与えられる。
 …のだが、この話は全然面白くないので説明を省く。





〜ミッション2 狂気の天才科学者の野望を止めろ〜
 報告によると、ナイ博士は優秀な科学者でありながら、自分の実験室で精製した麻薬を売りさばいて大儲けしているという。 その源を絶つため、博士を消すのだ!



 以上が第2のミッションである。
 そこで、すぐさまブルース・ツーとスリーの二人はナイ博士のいるタイのバンコクへ飛び、現地のSBI職員である チャールズと落ち合うことになった。

  

 このチャールズこそが、第4の偽ブルース・”本人はなりきっているつもりだけど全然似てない”・リー。 演じているのは ブルース・サイ なる人物。
 グラサンをかけてブルース・リー度を必死にアピールしているが、100人が100人ともブルース・リーに似ているとは 到底思えない面構えであることは言わずもがな。上の画像を見て似ていると思った人は、眼科に行くのが懸命だろう。




 さて、チャールズの調べによるとナイ博士は自分の生み出した恐怖の化学兵器を使用することで世界征服を企んでいた。 このままでは世界の平和が危ない。ブルース・ツー&スリーよ、ナイ博士の野望を阻止するのだ!
 …って、最初にSBIから与えられたミッションから 話がズレてきているような気がする のだが、 こちらの思い違いだろうか?


 それはともかく、ナイ博士の生み出した恐怖の化学兵器とは如何なるものか。
 恐るべきことに、この化学兵器を噴霧すると植物が一瞬にして枯れ果ててしまうというのだ。これで世界征服も思いのままと、 ナイ博士は自画自賛する。


 …。
 なるほど。こんな 枯葉剤ごときで世界征服を目論む とは、さすがは狂気の天才科学者。 考えることが常人の理解を超えている。まさに狂人だ。

 ここでブルーズ・リーのクローン2人と全然似てない偽ブルース・リー(ややこしい)の急襲を受けたナイ博士、 こんなこともあろうかと密かに開発しておいた第2の薬品を取り出して自分の部下たちに飲ませてしまう。


 これがなんと、人間の肉体を青銅にしてしまうという恐怖の青銅人間製造薬 だったのだ。 で、この青銅人間がどういう代物かというと…。











  


 …これは、大駱駝艦の金粉ショウか?

 しかし、これが強い強い。ヤン・スエ先生によって鍛えられたクローン軍団の鉄拳も青銅の肉体の前には金属音を 響かせるのが精一杯で、まるで歯が立たない。
 白ブリーフ姿のオッサンを金色に着色しただけ にしか見えないが、さすがはナイ博士の 開発した恐怖の青銅人間。やはり、天才の考えることは凡人の理解を超越しているようだ。


 などと感心してばかりもいられない。打つ手なしの窮地に立たされ、さしものクローン軍団も青銅人間から逃げ惑うしかない。
 と偶然、彼らを追いかけていた青銅人間の一人が足を引っ掛けて転倒する。すると、その拍子に 近場に 生えていた毒草が口に入り、それを食べた青銅人間は絶命してしまった。


 突破口を見つけ出したクローン軍団はさっそく毒草を食わせて青銅人間を退治し、ナイ博士の処刑に成功したのであった。 めでたしめでたし。





〜ラストミッション 最強のクローン人間ブルース・リーを決めろ〜
 無事に難事件を解決したクローン軍団。しかし彼らを生み出した博士に対し、SBIは礼を言うだけで謝礼金の一つも よこさない。怒りに震えた博士は、地上最強の戦士である3人のクローン人間ブルース・リーを使って世界征服を企む。



 今度はクローン軍団の生みの親である博士が狂気に取り付かれてしまった。
 が、やはり狂気に走った人間と言うのは冷静な判断ができないのだろうか、博士はクローン人間たちを戦わせて生き残った 最強の一人を使って世界征服を行うと言い出す。普通に考えれば3人いた方が効率が良いと思うのだが、常人の尺度で天才の 考えることを測ってはいけないのだろう。

 ところで今まで書き忘れていたが、この博士を演じているのは本物ブルース・リーの「ドラゴンへの道」でマフィアのボスを 演じていた ジョン・ベン のようだ。ヤン・スエ先生といい彼といい、この映画は中途半端に本物と 縁のある俳優を起用しているので困る。




 ともかくも、こうして ドラゴン・リー対ブルース・リ対ブルース・ライという(悪)夢のようなカードが 実現 することになった。今までドラゴン・リーだけは別録りになっていて豪華三人共演の看板に偽りありになりかけて いただけに、偽ブルース・リーのファン(いるのか?)は両手を挙げて喜ぶ瞬間だろう。

 しかしながら、ブルース・スリーを演ずるブルース・ライはあまりにスローモーすぎてスタッフから受けが悪かったのだろうか、 この夢の対決も中盤以降になるとブルース・ワン対ブルース・ツーばかり。 ブルース・スリーは一人蚊帳の外 という状態になって少し寂しそうだ。
 ちなみに、ここでブルース・ツーは 蛇鶴八拳 らしき拳法を使ってくるが、それが 出てくるのはジャッキー・チェンの映画だ!





 さて、壮絶な偽ブルース・リー3人組の巴戦が繰り広げられる中、博士の狂気を知った助手が余計なことにクローン軍団を説得し、 博士をSBIに引き渡そうとする。とはいえ、むざむざ捕まるような博士ではない。彼は護衛をクローン軍団の始末に向かわせた。

 その結果、単独行動をとっていたブルース・ワンが大量の雑魚に囲まれてしまう。しかし、彼は焦ることなくヌンチャクを 取り出すと、「ワチャァァッ!」と本物ブルース・リーばりに超人的な演舞を披露する!

  

 …って、あれ?
 このヌンチャク、片方しかない。 ハイスピードの演舞にしても、よく見ると 振り回しているのは紐を握った右手だけ ではないか。 どうやらブルース・ワンは、ヤン・スエ先生からヌンチャクの扱い方を習っていなかったものと思われる。





 一方、先ほどの巴戦で出番の無かったブルース・スリーは博士を捕らえるべく研究所に乗り込んでいく。ようやく 彼の見せ場がやってきたかと期待したのも束の間…

  

 ブルース・スリーは、博士が仕掛けたレーザーのブービートラップに引っかかって死んでしまう。
 ブルース・スリー、享年?歳。最後まで見せ場が存在しない、噛ませ犬以下の悲しい人生であった…。

 結局、博士は後から研究所にやって来たブルース・ツーの活躍 (先ほど彼は蛇鶴八拳を使っていたが、ここでは 猿拳 を使っている。それもジャッキー・チェンの映画だ!) によって、 無事SBIの手に引き渡されたのであった。おしまい。






 さて、「クローン人間ブルース・リー 怒りのスリードラゴン」はいかがであったろうか?

 クローン人間を生み出してしまったがゆえに、世界征服という狂気に取り付かれてしまった博士。戦うことだけを運命付けられ、 短い命を散らせたブルース・スリー。あまりに悲しい二人の姿には、安易にクローン技術を賞賛してはいけないという製作者の 姿勢が見て取れるだろう。
 本作は1977年に制作されたというが、25年以上も前の映画であるにもかかわらず、既にクローンの研究に対して警鐘を鳴らして いることには驚かざるを得ない。

 21世紀の現在、我々人類は本当に人間のクローン生成が可能なところまでやってきた。だが、それが倫理的に正しいこと なのか、我々はまだ答えを出せないでいるというのが現状であろう。そんな今だからこそ、本作を見て、改めてもう一度 クローン技術のことを考えてみるべきではないだろうか?






 …と、こういうのを深読みのしすぎという。
 たまに、こういう結論を書けば全て許されると思っている映画評論家がいるが、そういうバカな文章には注意したいものだ。


- 終 -



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