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母性愛


「SR388」…これは銀河連邦に所属する惑星の名前でもあり、私の半生を語る場合に、非常に大切な惑星だ。

その惑星の文明は、あるひとつの生命体によって滅ぼされたようだった。

その生命体はクラゲのような姿をして、空中を浮遊して移動する。
その生命体は身体の中心に赤い球体の集合…どうやら目などの役割を持つらしい…を持っている。
その生命体は鋭い牙で他のあらゆる生命体のエネルギーを吸い尽くす。
その生命体はβ線を照射するだけで爆発的に増殖する。




その生命体の名前は…「メトロイド」




惑星SR388から持ち帰られる予定だった氷漬けのメトロイドが宇宙海賊に奪われた時からずっと私と深くかかわり合っている名前だ。

数年前、私はひとつの神秘に遭遇する。

地中深くに生き残っていたメトロイドを殲滅する目的で再び惑星SR388に乗り込んだ私は苦戦の末…後にマザーと呼ばれることになる…メトロイドの最終形態を倒した。
マザーの口にミサイルを浴びせ、腹にボムを仕掛け…ともかく硬い外殻を切り崩すために体内への攻撃に集中した私は満身創痍の状態だった。

その朽ち果てたマザーの隣に、タマゴが見えた。
奇妙に思う私をよそに、音を立てて割れたタマゴの中から…小さなメトロイドが現れた。

小さなメトロイドは私の周りをぐるぐると回ると、そのままふよふよと浮遊していた。
まるで母親に甘える子供のようなその姿…

「すごい!!メトロイドが卵生で、しかもインプリントするなんて!」※インプリント(刷り込み:産まれて初めて見たものを親だと思い込む)

思わず私は声に出して驚いた。
今、銀河中でそのことを知っているのは私だけなのだ。

その後、私は銀河連邦の研究施設にベビーと名づけられたメトロイドを預け、その神秘的なミッションを終えた。

メトロイドとの不思議な縁…そして、今の私を語るためには、この話もしておかないといけないだろう…

とても悲しい話だが…

宇宙海賊が生き残っていたのを知ったのは、銀河連邦の研究施設からの救難信号をキャッチしたときだった。
宇宙海賊の幹部でもあるリドリーに出会った瞬間、宇宙海賊の復活を確信した私はビームを発射したが…完璧に打ちのめされた。
研究施設からベビーを持ち去られた銀河連邦は、私に宇宙海賊殲滅のミッションを与えてくれた。

単身、惑星ゼーベスに乗り込んだ私はマザーブレインの元にたどり着いた。
だが、ヤツは強すぎた。万策尽き、死を覚悟したあの時…懐かしい鳴き声と共にベビーが現れたのだった。
ベビーの決死の協力で、私はマザーブレインを破壊することに成功した。
崩れ落ちる惑星ゼーベスを爆破し、宇宙海賊を殲滅した私の心は重かった。


ベビーはもう居ない…宇宙に生きた最後のメトロイドは、私を助けて死んでしまった。
そのことが私の心に深く突き刺さった。


結婚し、妻となり、子供ができ、母親になったら…誰でも感じるのかもしれない。
母性愛…奇妙なことだが、ベビーに対して私は母親になったようなくすぐったい気持ちを感じていた。
そのベビーが死んだのだ…自分の力不足を恨めしく思った。

でも、今、また、あのくすぐったいような感覚を感じている。
奇妙なことを言うといわないで欲しい。ベビーが死んだのは事実なのに…。


少し前、調査のために訪れた惑星SR388で寄生生命体Xに取り付かれた私は瀕死の重傷を負った。
銀河連邦の研究施設は必死の除去作業を行ってくれたが、完全除去は私のパワードスーツの特性上、非常に困難だった。
寄生生命体Xは、私のパワードスーツごと身体を蝕んでいったのだった…死を覚悟した。

そんな絶望の中、あるワクチンが投与された。
苦しみ眠る私の身体から瞬く間に寄生生命体Xを食い尽くすワクチン。




夢の中で私は懐かしい甘えるような鳴き声を聞いた気がした。




BIOLOGIC宇宙生物研究所に飛び立つ私に研究施設のスタッフが教えてくれた。
寄生生命体Xのワクチンとなった細胞組織は、銀河連邦に残されていたメトロイドの細胞組織…つまり、ベビーの細胞組織だと…

「キミの命はメトロイドによって救われた。」

その言葉に私は呆然となった。私にメトロイドが宿っている…あのベビーが…
新調されたスターシップに乗り込んだ私の頬に冷たいものが流れていた。




「ありがとう。そして、おかえりなさい…ベビー」

to be continued ... METROID EPISODE IV "FUSION"





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