この道わが旅 夢幻工房入り口 -> 2次創作



光明





鎖につながれ、満身創痍のゴールドヒーロー…外ではデスボーグたちの機械的な声が聞こえる…


「…ダメ……ツヨ…………オシマ…」

「オロ…サ………ロチ…マ……Gレッ……キチ…」


どうやら、地球の少年たちがこの基地を見つけ出し戦っているらしい。

Gレッド…

ヒーローボーグ部隊に加わらず、マシンボーグ部隊にも加わっていないが
リーダーのスターヒーローや、マシンボーグ部隊を束ねるビクトリー司令官も認める実力の持ち主だ。

そのGレッドがガチャフォースという部隊を編成し、地球の子供たちとデスブレンを倒すため戦っている…

話には聞いていたが、こんなに強かったとは…
もちろんGレッドたちのガチャフォースの実力もあるだろう…

しかし、地球の子供たちの勇気の力がGFエナジーとなりガチャボーグに与える力は、その実力以上のものを発揮させてくれる


──フッ…こんな鎖につながれた私のコマンダーになってくれる者など…


そこまで考えて自嘲気味に首を振るゴールドヒーロー
無様に鎖につながれ、愛する人は洗脳され、心を閉ざし瞳から光を失った…こんなボーグに勇気を与えてくれる少年など…


カツッカツッカツッ…・・・


そこまで考えたところで現れる少女

「ふんっ…まだ元気なようだね……聞こえるかい?ゴールドヒーロー」

相変わらず少女の瞳には生気が無い。
この子も洗脳されているのは確実…だが、どうすることもできない


「…基地にガチャフォースが攻めてきたそうじゃないか。キミの洗脳が解けるのも時間の問題だな」

あくまで強がって言う…だが、自分が繋がれていることが虚しい

「さぁて…デスブレン様に逆らうものは私が倒す……そのためには可哀想なキミの恋人も使ってね」

──なッ?!

牢の向こうにはひざまずくシャドウガール…

「お呼びですか?オロチ様…」

「!!…シャ、シャドウ…?!」


ククッと笑ってこちらを見つめる少女
シャドウのほうに手を広げ、ほら、どうぞご覧あれ…とでも言いたげに見せ付ける


「…何も考えず…心を閉ざすほうが楽なこともあるの……」

ポツリとシャドウガールが呟く。

──えっ?

心を…閉ざしたほうが…楽?そ、そんな…そんな…あの気丈なシャドウからは考えられない…
何か待っていたように見えたが、そのまま少女と共に立ち去るシャドウガール


「シャドウッ!」


静寂の中に虚しく響く声…ゴールドヒーローは絶望に打ちひしがれた…






──タッタッタッタッタ…


足音で気が付く……どうやらオレも空虚な時間を過ごしていたようだ…

駆け抜ける金髪の少年と赤いマシンボーグ…あれがGレッドか?
多分シャドウを洗脳した少女を追っているのだろう…その後ろに黒い服の少女が続く…


──タッタッタッ…

もう二つ足音が近づいてくる…どうやら先ほどの金髪の少年の仲間らしい…ん?牢の前で立ち止まった…?


「マナちゃんッ!」


少年が牢の前で少女の名前を叫ぶ、どうやら隣の金髪の少女に話しかけているようだ。
フレイムニンジャが牢の鉄格子を焼き切り、身をかがめてこちらに歩み寄る二人…

「ひどぃ…ナオ!ヒーリングを」

コクンと少女の隣のナースボーグがうなづく。
注射器を構えてオレのほうに突進して…身体中に力がみなぎってくる。

その間にも両腕の鎖をサイバーニンジャが切り裂き、鎖のジャラジャラとした音が響く


「大丈夫かい?キミは…ゴールドヒーロー?」

「…ぁぁ…そうだが…キミは…ガチャフォースのコマンダーか?」


ニッコリと笑うと大きくうなづく少年。


「ありがとう…だが、こんな私を助けてもらわなくても…」

節目がちに石畳を見る…悔やんでも悔やみきれない…
見上げると、少年が驚いた顔をしている…が、真剣な顔になって「聞かせてよ」と言う


「このデスブレン基地にオレはシャドウガールと共に乗り込んだ。
 しかし、彼女は捕まり…洗脳され…オレの前に立ちふさがった……」

話を聴いて驚く少女


「そして、鎖につながれたオレに向かって…いっそ心を閉ざしたほうが楽だ…そう言って彼女は……」


何度も地面を拳で叩き、悔やむ……しかし、その腕を止められる。
えっ?と思い見上げると、先ほどと同じように、にこやかに笑う少年。


「まだ間に合うよ!がんばって助けようよ、ねー」

「うんっ!だってなんにも話してないんでしょ。話し合えば、きっとわかってくれるよ!」


顔を見合わせてお互いに声を掛け合う二人…恋人同士だろうか?こんなに信頼しあっているなんて。

何があってもシャドウを信じ、受け止める…そんな当たり前のことを忘れそうになっていたなんて…
自分を恥じると共に、シャドウを助ける勇気がわいてくる。

ゆっくりと牢を抜け出し、バイザーに手を掛ける…
見つけ出すべき相手は……検索を開始するゴールドヒーローの顔に緊張が走る


「…あそこか…」


一言呟くと、歩き始める。




あの忌まわしい大広間…デスウイングに囚われた場所…

そこにシャドウガールは立っていた…
光を無くした瞳をこちらに向け、黒いオーラのようなものを背負って。

洗脳されている少女の姿は無く、シャドウガールだけ…捨てられたのか?


歩み寄るゴールドヒーロー

…いつでも助けに入れるようにニンジャボーグたちを待機させる少年
すぐに傷を治せるように集中するナースボーグと少女


────ウワァァァァァァァァァァァ


突如、シャドウガールが雄たけびを上げ刀を真正面に向けこちらに向かってくる
驚く少年と少女だが、ゴールドヒーローは何も動じずに叫ぶ


「聞いてくれッ!シャドウッ!」


両手を広げて突進を受け止めるゴールドヒーロー…肩に深々と突き刺さる刀…
傷の痛みに顔をしかめながら、飛び込んできたシャドウガールをしっかりと抱きしめる


「……お…覚えているか…あの夜のこと…」


耳元でゆっくりと語り始めるゴールドヒーロー
対照的に暴れるシャドウガール…光を失った瞳からはとめどなく涙が溢れている…


「あの夜…修行場を抜け出して…丘の上の大きな木の下でいろいろ語り合ったよな…」


ピクッと震え、動きが止まるシャドウガール…相変わらず涙は溢れている。
時間が止まったように静まるデスボーグ基地の大広間
風になびくマント以外、時が動いていることを証明すものはないような気がする…


「言ったよな…お前の背中を守ってやるって…」


にっこりと笑ってこちらを向くシャドウが思い浮かぶ…月の光に照らされ、キラキラ光る笑顔…


「守れなかったオレは自分自身に絶望した…でも、本当につらかったのはお前だ…
 それを忘れて、オレだけが悲劇に浸って……そのことでお前がもっと心を閉ざしてしまうなんて…オレは…」


また、ピクッと反応するシャドウガール…小さく「ぁぁぁ…」と呻くように呟く
抱いた手を緩めて、まっすぐシャドウの顔を見る…


「オレは、お前がどんな風になろうと…
 今なら…今だから…はっきりとオレは自分の気持ちを伝える……あの時の約束を…」


頬を撫でながら一言一言…力強く呟くゴールドヒーロー


「シャドウ…好きだ…手放したくない…お前のすべてを受け止めて全部を愛したい!」


唇を重ねる二人…濁った瞳からはとめどなく涙が流れる
しっかりと抱き合い…そして身体を離す……弱々しく動くシャドウガールの唇…


「ゴ…ゴールド……こ、こんな私を受け止めてくれる…の……?」

「オレのほうこそ…許してくれ…」


濁った目の輝きが戻る…いつもの優しい瞳…洗脳が解けた証拠だ


「ずぅっと…」「ずっと…」


シャドウガールを優しくマントで包み込み、抱きしめるゴールドヒーロー…


「もう大丈夫…もう、二度とこの手を離しはしない」

「ゴールド……うぅ…ぐすっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁん」

腕の中で泣くシャドウをもう一度力強く抱きしめる
見ている少年と少女も、どちらともなく手をしっかりと握りあう




………




「僕たちは大丈夫だよ。ねー」

「うんっ、でもホントに二人とも大丈夫?」


ガチャボックスから出ると小高い山の頂上…どうやらイナリ山らしい…そして、我々を助けてくれた少年と少女…
顔を見合わせてニコニコと笑いながらしゃがみこんで話しかけてくれる。


「すまない…我々のわがままで。キミたちと共にガチャフォースとして戦うのが一番の恩返しだとわかっている…だが…」

「…わたしは…わたしは……戦いが怖くなってしまった…ヒーローボーグ失格だ……」


震えるシャドウガールの肩を優しく抱くゴールドヒーロー
よしよし…と背中を優しく触られ、涙目になる。


少年の肩の上からサスケが声をかける

「すまないが、我らにも何もできはしない…せめて平穏な日々を過ごして心の傷を癒してくれ」


「身体の傷ならいくらでも治せるわ…でも、心の傷までは無理…だから、私たちにできることは、静かに見送るだけよ」

少女の側に立つナオからも声がかかる


「すまない…」

頭を下げるゴールドヒーロー…シャドウガールは洗脳されたことがよほどつらかったのだろう…まだ震えている




少年と少女が木漏れ日の向こうに消え、森の中に静寂が訪れる。
そして、二人のことは、この少年と少女だけの秘密になった。




その後、イナリ山に消えたゴールドとシャドウを見たものは…もちろんいない


が、道に迷った男の子が泣きながら森を歩いていると、キラキラと光る小さな光が現われる…
なんだろうと思って近づくと逃げるその光…追いかけていると、不思議と森の外に抜け出ることができた…という噂。

また、野良犬に追いかけられてイナリ山の空き地を逃げ回っていた女の子が気が付くと、野良犬の前にキラリと光る何かが見える…
えっ?と思っていると、次の瞬間、野良犬は毛を全部刈られて丸裸にされて逃げていった…という噂。


そんな噂が子供たちの間で広まったらしい。










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