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深淵
滑り落ちた地下通路で目覚めたゴールドヒーローは、
傍らにシャドウガールが居ないことを不審に思いつつも脱出のための通路を探索する。
両手に構えた緑色のダガーと金色の鎧…暗闇の中できらびやかに光るその姿…
脱出経路と見失ってしまったシャドウガールを探しつつ深い闇の中を歩く。
…あれはヒーローボーグ部隊として修行が始まったときだったろうか…
修行中からそそっかしく、すぐに危ない目に会っていたシャドウに惹かれていったのは。
唐突にそんなことを考えるゴールドヒーロー
修行中の何気ない一言…「オレが守ってやるよ!」…その言葉に目を輝かせてにっこり笑ったシャドウ。
危ない目に会ってもへこたれずまっすぐに前を向いてがんばるシャドウ…その姿に自分も奮い立たされる。
シャドウを守るたび、自分の心の中に生まれる甘酸っぱいような感情…
夜…修行場を二人で抜け出し、空を見上げて夢を語り合ったこと…なつかしい思い出だ。
…なにかの虫の知らせなのか、先ほどから不安な気持ちが胸を締め付ける。
その反動でこんなことを思い出しているのだろうか…
シャドウの身になにかが…?
「考えすぎだな…」
ゴールドヒーローはシャドウガールの安否を心配しつつも、冷静に現状を分析していた。
──この大きな建物が、すべてデスブレン基地だとすると、私たち二人ではどうすることもできないのではないか?
自分に戦いとは何かを教えてくれた先輩の言葉が甦る。
広い道場で座禅を組み、瞑想する先輩が無鉄砲だった自分に向かって投げかけた言葉。
「かなわぬ敵相手に無謀な戦いを行うことが勇気ではない。真の勇気とは、冷静に状況を判断し、時には逃げること…それも勇気だ」
いなくなったシャドウガールを探すのも大事だが、デスブレン基地がここまで巨大化しているという事実も仲間たちに知らせなければ…
少しだけという気持ちで探索に入ってしまった自分達を呪った…
が…今は脱出経路を見つけ出すのが先決だ。
そして、シャドウと共に脱出し、先輩達とこの基地を壊滅させねばならない。
後悔ならいつでもできるのだから…
そう思いながら歩くと赤い光が見える…
暗い赤い光が差し込む方向を見るとちょっとした広間になっていた。
多くの石像が並んでいたが、崩れてしまったのだろう。
瓦礫が折り重なる向こうに多数のデスボーグが見える…おおかた瓦礫の下敷きに…
「んっ?」
──違う…刃物で切られた跡がある…これは…
「シャドウが…ここに?」
思わず疑問を口にするゴールドヒーロー
これだけの数と戦ったとしても、相手はデスボーグだ。負けるわけがない。
それよりも、これだけの数を倒せば、この場にとどまっていてもいいはずだ…
こんな罠が仕掛けられている可能性が否定できない場合、一人で突破しようと闇雲に動くよりも
パートナー…この場合はオレだが…を待って、この場にとどまるほうがはるかに有益だと考える。
──しかしシャドウの姿はどこにもない。
いつもの悪い癖でどんどん進んでしまったのか?
そうなると面倒なことになるな…と思いつつ、この広間を探索するゴールドヒーロー
地面が少し湿っている…瓦礫やデスボーグの位置から見て、ここに誰かが居たことは確実だ
汗?それとも…涙?
なんだか分からないが嫌な予感が止まらない…
シャドウが泣くなんて考えたことすらなかったことなのに、自然とそういう考えが浮かんでしまう。
「なんなんだ…この、奇妙な胸騒ぎは…」
また、言いようのない不安が何度もゴールドヒーローを締め付ける…
湧き上がる不安を振り払うように首を振る。
任務のことを考えよう…いくら心配してもきりがない…
──ピピッピピピッ
そう思った直後、バイザーに反応がある
どうやらデスボーグに囲まれている…少々長居をしすぎたらしい……
バイザーの情報を確認すると、オメガにニュー、それにイオタ
マシンボーグを元に生まれたデスボーグと固定砲台、火炎放射ボーグか…
ともかく、この不安を打ち消すには格好の獲物だ。
一気に蹴散らさせてもらうぞ…
「トゥッ!」
大きくジャンプすると、両手を広げて緑に光るダガーからビームを放つ
──まず、2匹ッ!
続けて空中をすべるように走り、次々とニューを粉砕してゆくゴールドヒーロー
そのまま降り立ち、バイザーにアクセスする…
しかし、地上に降りるのを待っていたように、左右から火炎放射の洗礼が来る…
が、お互いを燃やしてしまい慌てるイオタ
バイザーへのアクセスで察知したゴールドヒーローはすでに飛び上がり、次のビームのための準備を行っていた。
あたふたと大慌てのイオタも、頭上から伸びてきたビームに貫かれ動きを止める
固定されたニューたちも、ゴールドヒーローの素早い動きにはただの的だ。
リングビームを撃つ間もなく破壊されていく…
──残るはオメガの部隊のみ…
バイザーの情報を読み取りながら瓦礫の上に陣取るゴールドヒーロー
右にハンマー装備…左にガトリング装備…んっ?ドリル装備が見あたらな……?!
──下かッ!
足元の瓦礫が崩れ落ち、中からドリルを装備したオメガが飛び出す!
が、肝心の相手がどこにも居ない…そのまま上空を見上げるオメガ。
すでに上空に飛び上がっていたゴールドヒーローは、そこに向かって巨大なビームを放つ
「必ッ殺ッ!」
瓦礫が一瞬真っ白に光り、大音響と共に四散する!
もうもうと立ち込める煙の中、バイザーに手を当てアクセスを開始する
──ピピッ…デスボーグ…ゼロ…
情報画面にはデスボーグがすべて消滅したことを示す0の数字が表示されている
どうやら先ほどの大爆発ですべて倒したらしい…
「…やれやれ…んっ?」
煙が晴れると瓦礫の向こう側に黒っぽい人影が近づいてくるのがバイザーに映る。
目の前に現れたのは、金髪の女戦士…シャドウ?
──ピピッ、シキベツ…ヒーローボーグ……
警戒を解くゴールドヒーロー。
「どこ行ってたんだ、心配していたんだぜ?」
にこやかに右手を差し出すが、様子がおかしい…
その刹那、刀が一閃
───ガキィィィンッ
すんでのところで右手のダガーで受け止めて驚くゴールドヒーロー。
「どうしたんだっ!シャド──ッ!?」
信じられないといった様子で叫ぶゴールドヒーロー。
しかし、叫び終わらないまま腹に蹴りが食らわされる…
──グッ…ガハッ…
強烈な蹴りで思わず膝をつく…そのまま振り下ろされる刀
両腕でガードし、もう一度叫ぶゴールドヒーロー
「ガ…グゥ……シャ…シャドウゥ!目、目を覚ませ!オィ!目を覚ませ!」
刀から伝わる力はいつものシャドウとは比べ物にならないほど強い…
一瞬でも力を抜けば、自分の命が危ない
それでも懸命に呼びかけを続けるゴールドヒーロー
そのとき、シャドウガールの唇がかすかに動く…
──コ…ナ…イ…デ…?
「な、なんだっ!こ、こないで…来ないでってどういうことだよ!シャドウッ!」
そう叫んだ瞬間、後ろから聞こえる不快な声…
「コウイウコトダ…ゴールドヒーロークン…」
──ドスッ
棒状のもので背中を思いっきり突かれる…崩れ落ちるゴールドヒーロー…そして目の前にはシャドウガールの刀が光り…
───ザシュッ
「シャ、シャドウ…なぜ…」
薄れ行く意識の中、自分を斬りつけた金髪の戦士を見つめるゴールドヒーロー
光のない瞳から流れ出る涙が一筋…
その光景を最後にゴールドヒーローの記憶は途切れた…
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