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虜囚
デスブレンが地球を狙っているのは皆も知っての通りだ。
もうすでに数人の仲間が捕らえられているが、それがデスブレンに操られた子供たちの仕業だとわかった。
ヒーローボーグ部隊のリーダー、スターヒーローがそう切り出したのは数週間前だ。
その話を聞いて以来、ヒーローボーグたちは各地に飛び、まずデスブレンの基地を見つけることに全力を挙げた。
しかし、思ったように成果は上がらず、反対に何人ものヒーローボーグが囚われ、洗脳されていった。
巧妙に隠されたデスブレン基地を見つけ出すのは、やはり困難か…?
スターヒーローは、ヒーローボーグとして修行中の者も任務に加わらせることを決定する。
…そして、修行中のシャドウガールとゴールドヒーローにもその指令が下ったのだった。
「デスブレン基地を見つけ、我々ヒーローボーグ部隊で殲滅する…そのための大事な任務だ。頼んだぞ」
スターヒーローにそう言われた二人は、顔を見合わせ強くうなずいた。
数日後、河川敷の地下に大きな建物があることを突き止めた二人。
先輩たちに報告する前に、一度内部を探索しておこう…二人の意見が一致して、そのまま進み始める…
暗い光に満たされた機械的な洞窟…明らかにデスボーグたちの前線基地だろう。
廊下に響き渡るコツコツという自分たちの足音すらも気味悪い…
と、突然二人の足元が突然崩れる…落とし穴?!
「うわっ!」「きゃぁっ!」
石畳の上を滑り落ち、大きく尻もちをつくシャドウガール。
「っー…ぃ、てて…ぁ、ぁれ?」
そこにゴールドヒーローの姿がない…
一緒に滑り落ちたはずのゴールドヒーローは、影も形もなかった。
「ゴールド!どこなのっ!ゴールドー!」
──ゴールドーゴールドードードードー
暗闇の中に響き渡る声…しかし、ゴールドヒーローの声は聞こえない。
ともかく、暗い闇の中を進むシャドウガール…
ゴールドヒーローが居ないのは心細いが、これでもヒーローボーグの一員だ。
ともかく、有益な情報を集めて帰還せねば…そう思い直し、先に進むシャドウガール。
いつも修行中にも自分の背中を守ってくれていたゴールドヒーロー。
自分のことをすべてさらけ出して付き合える唯一の存在…
ある意味恋人同士のようなものだ。
しかし、自分達は修行中…。
二人とも微妙な距離を置きつつ、ここまで修行を行ってきた。
もちろんスターヒーローをはじめ、先輩のヒーローボーグたちはみんなわかっていたが、あえて言わなかった。
そんなゴールドヒーローが居ない、初めての探索だけど…だからこそ気を引き締めていかなければ…
ふと、目の前を見ると大きな広間があるらしい…暗く赤い光だが、うっすらと照らされている広間…
なにか情報があるかも…と思いながら進む…
しかし、広間は何もないただの広い空間だった。
「なにもなし…か…」
広間の周りにはデスボーグの形をした石像が並ぶ…薄気味の悪い…と思いつつ、ゆっくりと広間を歩くシャドウガール。
が、ちょうど広間の中心に来たときに大きく揺れる地面
大広間の石像が崩れ、中から大量のデスボーグが…それも最高の性能を持つオメガの部隊だ。
「…邪魔するなら…斬るッ…」
背中の刀に手を掛けて、構えを取る。
周りをゆっくりと取り囲むオメガたち…その中から、ドリルを両手に構えたオメガが2体飛び込んでくるっ!
…が、もうそこにはシャドウガールの姿はない…
きょろきょろと周りを見回すオメガの上空から「やぁぁぁぁ!」という声とともに刀が振り下ろされる。
真っ二つになったオメガの向こう側に、紫のシルエット…
その姿を見つけると、周りを囲んだ鉄球装備のオメガが同時に鉄球をそこに打ち込む。
湧き上がる煙の向こう側には…大きく壊れた床板があるだけ…
──シュッ!
風を切る音に驚いて空を見上げる両隣のオメガ。
はたして、隣にいたオメガが宙を舞っている
──シュッ!シュパッ!──ッ!シュッ!
次々と聞こえる風を切る音
その音とともに、何が起こったのかわからないまま次々と宙を舞ってゆくオメガたち
恐怖に駆られたガトリング装備のオメガが敵味方かまわずガトリング砲を撃ちまくる…しかし、一瞬見える金色がどんどん自分に近づいてくる…
両腕を大きく暴れさせながらガトリング砲を撃ちまくっていたが、プスンッと音を立てて止まってしまう…弾切れ?!
…そう思って自らの両手をまじまじと眺めるオメガ。
その瞬間、目の前に金色の流れる髪の毛…シャドウガールが刀を大きく振りかぶって現われた!
大慌てで背中を向けた瞬間に真っ二つに切り裂かれるオメガ。
その向こう側に両腕のレーザー砲でこちらに狙いをつけたオメガが3体…!
時間差で発射される6本のレーザーを、左右のステップで華麗に避けるシャドウガール。
また真ん中のオメガの目の前に瞬間的に移動する…大きく振りかぶられる刀。
しかし、斬ろうと振りかぶったのはフェイント…右側のオメガに向かってシャドウスラッシュが決まる
左側のオメガはそれに気づき、慌ててレーザーを撃つ…が、その射線には先ほどフェイントを掛けられたオメガがっ!
味方にレーザーで撃たれ、吹っ飛ぶオメガが起き上がったときには、レーザー砲のオメガは自分だけになっていた。
…決闘する様に向かい合うオメガとシャドウガール…レーザー砲と刀…勝負は歴然のように見えるが…
腕のレーザーが光った瞬間に、自分の隣に現われるシャドウガール
瞬間移動?!と、驚きつつもそちらを向いたオメガだが、シャドウガールの姿は見えない。
──ドスッ
背中からの一撃…ドウッと倒れたオメガの後ろからシャドウガールが現われる。
……そして、デスボーグ部隊は、全滅した。
ハァハァと肩で息をしながらも、逆手に持った刀を持ち直して、パチンと背中の鞘に戻す。
「ふぅ…」
大きく息を吐き出し、もう一度周りの様子を確かめようとした瞬間、その声が聞こえてきた。
「オォ…金色ノ髪ノ娘ヨ……ソンナニ急イデドコニイクノダイ?クックック」
──このっ…人を不快にさせる声はッ!
上空を見上げると、デスウイングが優雅に羽ばたいている。
ゆっくりとシャドウガールの目の前に降りて来ると、鎌をゆっくりと地面に突き刺し、それに寄りかかって話し始める。
「クックック、デスブレン様ニサカラウノカ…愚カナガチャボーグダ…」
スキだらけのそのしゃべり方…そして、人の神経を逆撫でる声…
背中に背負った刀の柄を握り締め、飛び掛るタイミングを計るシャドウガール。
悠々と両手を上げて、参ったねといった感じでため息混じりに首を振るデスウイング
その刹那、シャドウスラッシュが決まる!
そのままデスウイングを斬りつけ、跳ね飛ばし、叩きつける
ガラガラと崩れる瓦礫から立ち上がったデスウイングだが、その様子はまったく優雅なものだった。
「フフ、ミゴトナモノダ…シカシ、コレナラバドウカナ?」
パチンと指を鳴らす音が聞こえると同時に、上空からたくさんの羽音が聞こえる。
見上げると、黒い翼に混じって金色の光が見える…
──なんだ…あの光は……デスボーグでもない…ましてやデーモンウイングでも……あぁ?!
「!?ゴ、ゴールドッ!」
目の前にデーモンウイングに捕らわれたゴールドヒーローが連れてこられる。
金色の光は、目の前に降り立ったデーモンウイングに捕まったゴールドヒーローのものだった。
がっくりとうなだれたその姿…傷だらけの鎧…壊れたバイザーからはアザだらけの顔が見える…
「…うぅ……ゴ、ゴールド…ゴールドぉ…」
こんなにボロボロになるまで戦って…剣を持つ手が震える…
「クックック…コノボーグ、オマエノ大事ナボーグラシイナ……ン?動揺ガ見テ取レルゾ?クックック」
羽ばたきながら面白そうに話すデスウイング。
指をパチンと鳴らすと、デーモンウイングが代わる代わるパンチを浴びせる。
──ウグッ…クッ……クゥッ…た、助けてくれ……シャドウガール…
弱々しい声で呟くゴールドヒーロー。
その様子を面白そうに眺めるデスウイング。
「オマエノ大事ナボーグガ、助ケヲ求メテイルゾ?……サァ、剣ヲ捨テロ、ソウスレバ解放シテヤルゾ?」
剣を捨てるのを躊躇するが、そのたびに呻き声とともに自分の名前を呼ばれる。
誇り高いゴールドヒーローが、弱音を吐くはずがない…わかっていても、彼の言葉が自分の心に突き刺さる…
「クッ…くそっ……約束だ!ゴールドを解放しろっ!」
──カランカランッ──
刀を投げ捨て、両手を上げ、大の字のポーズをとるシャドウガール。
その両側からデーモンウイングが羽ばたいてくる。
しっかりと両腕捕らわれても、その瞳には炎が宿っている…
キッとデスウイングを見つめて気丈に振舞う。
「さぁ!約束だ…ゴールドを……?!」
しかし、その瞬間、ゴールドヒーローの身体が七色に輝き…ガニ股でニヤリと笑うボーグが現われる。
目を見開き、唖然とするシャドウガール…それを見て笑うデスウイング
「クックックッ…オモシロイ…実ニオモシロイ……イマノ顔…サイコウダッタゾ…」
「っ!なっ!き、貴様!わ、わたしを、だ、だましたのかッ!」
暴れるシャドウガール…だが、両側を押さえつけるのは、非力なデスボーグではなくデーモンウイング。
しっかりと抑えられた両腕を振りほどこうともがくが、それも徒労に終わる…
「クックック…オロカナ……」
大きなドクロまでもニヤリと笑いながら、ゆっくりと鎌を引く。
そして、力いっぱい突き出された鎌が、まっすぐシャドウガールの腹部に直撃する
「…ゴ、ゴールド……」
──わたしは…もう…あなただけは逃げて……
愛するゴールドヒーローを最後まで思いつつ、シャドウガールの意識は闇に堕ちた…
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