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Like a whirlwind
サイバーデスドラゴンを倒し、一息つくコウ。
「すごいなGレッド!あんな巨大化できるなんてっ!」
「あぁ、きみたちのGFエナジーが純粋に強力だからさ…ムッ?!」
突然身構えるGレッド──どうした…と言いかけてコウも異変に気が付いた。
空が暗い…どす黒いプレッシャーのようなものを感じ…空から大きな声が響き渡る。
────ウハハハハハ…Gレッド…まだ生きているのか…しぶとい、実にしぶとい…
「…ッ!デスブレンッ!貴様の野望もここまでだなっ!」
空一杯に広がる大きな黒いもやと赤い瞳…大きな圧迫感がGレッドとコウを見下す。
逃げ惑いあわてる大人たちの中、Gレッドとコウはまっすぐににらみつける。
「へへーん、オレたちがいる限りオマエの好きにはさせないぜっ!」
視線をGレッドに戻し「なっ!」といった感じで強くうなずくコウ。
振り返ったGレッドも大きくうなずき、すっと指を空に向けて言い放つ。
「わたしの故郷の二の舞には絶対にさせない、覚悟しろッ!デスブレンッ!!」
───フ…ウハハ…ウハハハハハハ…ウハハハハハハハハハハ
空に広がる赤い瞳を面白そうに細めたかと思うとデスブレンの高らかな笑い声が響き渡る。
──ウハハハハハ…おもしろい……そうだ…貴様らの相手をする前にエナジーの補給を兼ねて…
突然赤い瞳が大きく開かれたかと思うと紫色の光が一筋、一直線に落ちてきた!
間一髪、避けるコウ…「うわっ!」その光景を間近に見たオロチの目が大きく開かれる。
──あ…あの…あの光は…!
たくさんの流星が降った夜、オロチも同じ光を目撃していた…
頭を抑えうずくまるオロチ。身体はガクガクと震えて何かを呟いている。
「…あ、あ、ぁ、あ、あの光、記憶が…そう、あ、あの光だ…わたしをさらったあの光…」
オロチの異変に気が付いたコウが駆け寄ろうとした、まさにそのときもう一本の光がオロチを捕らえる。
──迎えに来てやったぞ。帰ってこい、哀れなる小娘よ…
「キャーッ!」
紫の光に包まれ叫び声をあげるオロチ
手にしていたガチャボックスが吹き飛ばされアスファルトの上に投げ出される。
…駆け寄ったコウの目の前には紫の光の輪で縛られたオロチが立っていた…が、グイグイと締め付けるらしく苦しそうに座り込んでしまう。
紫色の光の輪に包まれて身動きが取れなくなってしまったオロチはいっそう震える。
「オ、オロチ!大丈夫か?」
「あ、あのときと…あのときと同じ…わたしがさらわれたときと同じ…こ、怖い…け、けど…けど…」
一瞬、気が動転したのか弱気な目になっていたが、それでも空の瞳を睨みつけるオロチ。
だがしかし、すぐに驚きと戸惑いが瞳の中に現れた
────えぇっ!?
引きずられるように身体が宙に浮かぶのを、コウもオロチ自身も驚いてしまう。
赤い瞳からもう一度放たれている紫の光、それがオロチを縛る光の輪を包み込みオロチを連れ去ろうとしていた。
──ウハハハハ、こんな小娘でもエナジーの足しにはなるだろう…カラカラになるまで吸い取ってくれる
驚くオロチ。すべてのエナジーを吸い取られることは精神の死を意味する。
勇気がガチャボーグたちのエナジーになるとともに、デスブレンたちのエナジーは恐怖の感情…
多くの恐怖を感じれば感じるほど、デスブレンたちには上質のエナジーとなる。
…そして、対象の人間の精神を蝕み、最後には崩壊させてしまうほどの恐怖が最高級のエナジーだった。
コウは慌てて腕をつかもうとするが光の輪が邪魔をしてうまくつかめない。
そうしている間にもどんどんオロチが紫の光に引きずられる…
「くっそぅ…オロチ、ごめんっ!」「きゃっ!」
そう言うと、背中からオロチの身体を両手でしっかりと抱きしめる。
アスファルトの地面にしっかりと足を踏ん張り、これ以上オロチが宙に浮かび上がるのを阻止しつつ空の瞳に向かって叫ぶ。
「絶対に離すもんかッ!オロチはオレたちの仲間だッ!オマエの道具じゃないッ!」
────ウハハハハハハ…友情とは美しいものよのぅ…子供二人を吊り上げることぐらい造作もないが…どれ、ひとつ遊んでやるとするか…
デスブレンの声が響き渡り、オロチが落としたガチャボックスが光り始める…
そのなかから、先ほど一緒に戦ったデスウイングが羽ばたきながら現れる。
あっけに取られるオロチをよそに、デスウイングは優雅に羽ばたきながら語りかけてくる
「オロチ、クックック…オロチ、クックック…愚カナ小娘…オトナシク、デスブレン様ノ血肉トナレ…」
─────なっ?!
驚くオロチの目の前で、大きく鎌を持ち上げたかと思うとゆっくりと近づいてくる。
オロチの影になってコウには何が起こっているのかわからないが、オロチにはしっかりと見えていた…
自分を離すまいと力いっぱい握られているコウの両手…そこに向かって近づいてきているのは明白だった。
「コ、コウ、わ、わたしを離せ!デスウイングがッ!」
「な、なんでだよ!それにデスウイングがどうかしたのかよ?」
オロチの影で状況がうまく飲み込めないコウだが、重ねた指に痛みが走る。
デスウイングの鎌で斬られた指からは血がにじむ…「っ!…ってぇ…な、なんだよ」
──ウハハハハハ、実に美しい…そのまま自らの無力に絶望するがよい……デスウイングよ…哀れな子羊を切り刻んでやれ…
デスブレンが命じるとまた鎌を持ち上げるデスウイング…オロチの目には絶望が広がる…
コウの両腕といわず身体中に無数の傷が刻まれ、血染めで倒れる光景が思い浮かぶ…そしてその光景が小さくなるのを見つめる自分の姿
「い…ぃゃ…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
じたばたと暴れるオロチ、それを通して抱きしめるコウにもオロチの恐怖が伝わる。
オロチを離すまいと両手でしっかりと握っているその腕に鎌が振り下ろされそうになった瞬間…
────チェイサーッ!
横薙ぎにGバスターがデスウイングを吹き飛ばす!
アスファルトの上を転がるデスウイングだが、翼をはためかせ体勢を立て直すと面白そうに話しはじめる。
「オモシロイ…Gレッド……デスブレン様…」
──ウハハハハハハ、いいだろう……好きに使うがよい…
またオロチのガチャボックスが光り、現れたのはルビーナイトとサファイアナイト…そしてダークナイトであった。
ゆっくりと羽ばたき3体の目の前に下りてくるデスウイング…
「ムゥ…4対1……か…」
Gレッドが呟く…オロチと戦ったときに、この4体の強さは知っている…デスウイング単体ならどうにかなったかもしれないが
ダークナイトや2体の騎士まで加わったとなると状況はかなり悪化してしまった。
「オロカナリ、Gレッド…ワレラデスブレン直属ノ親衛隊ニ勝テルト思ウノカ?」
…構えを取るGレッド…だが、その答えは意外な場所から聞こえてきた。
「…そうだな…事は全てエレガントに運べ…とはよく言ったものだ…この行い…エレガントとは程遠い…」
突然の衝撃に吹き飛ばされるデスウイング
意外な場所…背中からの衝撃に驚きつつ振り向くと、クロスの形に剣を構えたダークナイトの姿が飛び込んでくる。
「…ヌ、ヌゥ?ダークナイト?貴様、裏切ルノカ?」
「さぁて、裏切る?
騎士道とは主のために戦い、主のために死ぬこと…ではないかな?」
あっけに取られるルビーナイトとサファイアナイトを尻目にゆっくりとGレッドに近づくダークナイト
そしてデスウイングたちにゆっくりと振り向くと言い放った。
「暗闇に生きる我に光をもたらしたのはオロチ様…このダークナイトに騎士としての使命を思い出させてくれた記憶を失った悲しき姫君のため…
最初で最後の…共闘と行こうではないか…もちろんエレガントにな…」
言い終わるが早いかソルクラッシュを放つダークナイト
その攻撃をまともに食らい、またも吹き飛ぶデスウイング
体勢を立て直そうと羽ばたく刹那、Gレッドの蹴りで吹き飛ぶデスウイング
Gレッドはそのまま空中で連続攻撃を叩き込みながら間合いを計る。
デスウイングが吹き飛ぶと同時に砂煙の向こうからルビーナイトとサファイアナイトが切り込んでくる…が…
キンッ!
両側から双子のようにシンクロして同時に切り込んできた2体を両腕のソルブレードとスターブレードで軽々と受け止めるダークナイト。
「やるではないかGレッド…さて、赤と青の騎士よ…お前たちと遊んでいる暇はないのでな…」
軽々とランスを受け止めているダークナイトが呟くと、両腕に力を込める。
気合一閃、左右に吹き飛ぶルビーナイトとサファイアナイト
吹き飛ばされたサファイアナイトが立ち上がるよりも早く近づくダークナイト
消えたと思えるほどのスピードに驚くサファイアナイトだが、次の瞬間には盾ごと薙ぎ払われ大きく飛ばされる
くるくると空を舞うサファイアナイトの耳にGレッドの声が響きわたる
──チェイサーッ!
Gバスターで撃ち抜かれて吹き飛ばされ倒れるサファイアナイト
それを見ていたルビーナイトが恐怖に駆られ盾を構えたときには、真後ろにダークナイトが立っていた
「遅いのだよ…赤の騎士よ…」
驚き、ボムを撒き散らすがそのボムの爆発すらすり抜け目の前に立つダークナイト
ソルブレードとスターブレードが振り下ろされ、倒れこむルビーナイト
「さぁ!これで形勢は逆転したぞっ、デスウイング!」
「姫君を守るのが我が役目ならば…当然のことだ」
デスウイングはその一部始終を見ながら感嘆の声を上げた
「クックック…サスガハ最強ノ騎士ト最強ノ勇者…シカシ…」
パチンと指を鳴らすと上空からデーモンウイング部隊が降りてくる
鎌が振り下ろされると同時に、殺到するデーモンウイング
「サァ、アソンデアゲナサイ、カワイイ子供タチ」
数十体はあろうかという大軍でGレッドとダークナイトを取り囲む…
そして必死に抱きしめて引きずられまいとするコウの周りにも何体ものデーモンウイングが羽ばたいている。
「わ、わたしを捨てて逃げろ、コウ!おまえが傷つく必要はない!」
「い、いやだっ!怖がってる女の子を見捨てて逃げるなんて、そんなの男じゃないやい!」
力いっぱい抱きしめられるのを感じるオロチ。
しかし、自分の服が血で汚れているのを確認すると、涙目になってしまう。
「コ、コウ…すまない…すまない…コウ…」
「ダークナイトも言ってるじゃないか、いてっ!お、女の子を守るのが騎士の役目だって!いててっ!だ、大丈夫っ!」
見る間に腕に赤い筋が何本も入り、血がにじみでる。
Gレッドがコウの背中を、ダークナイトがオロチの前をそれぞれガードするが、あまりにも数が多すぎる。
デーモンウイングの部隊が鎌を振るうたびにコウの腕や背中、手…いたるところが傷ついてゆく。
それでもオロチを抱きしめて離さない。手は血まみれでオロチの服にも染みを作っている。
「も、もぅ…もぅいい…コウ、コウ…わたしのために傷つくなッ!…こんなっ、こんなっ…わたしのためにッ!」
じたばたと暴れながら手を離せと泣き叫ぶオロチを見上げてコウも叫ぶ
「い、いやだッ!オロチ、記憶なくして泣いてるじゃないか!怖がってるじゃないか!そんなの…ほっとけるかよっ!」
いくら小さなガチャボーグといえども、これだけの数が一斉に襲い掛かれば致命傷を負ってしまいかねない。
そんな風になりながらもデーモンウイングの攻撃に耐えるコウ
Gレッドとダークナイトもそれぞれの主のため賢明に戦う。
しかし、デスウイングとデーモンウイング部隊との数の差は歴然だった。
Gレッドは数十体のデーモンウイングに取り押さえられ、
ダークナイトもデスウイングの鎌の連撃を受け膝をついてしまう…
万事休すか?コウ、Gレッド、そしてダークナイトまでも諦めかけた…
そのとき、上空からデスブレンのものではない声が響き渡った!
「見事なりッ!獅子戸 吼…そしてGレッドにダークナイトよ…それに引き換え…この腐れ外道どもは」
太陽を背に電信柱の上にシルエットが見える…大型のマシンボーグなのだろうか、腕組みをした赤い機体。
何者かと取り乱すデーモンウイングたち…電柱の上にシルエットを認めると何体かが突撃する…
…が、そのシルエットに到達する前にぼろきれのように墜落していくデーモンウイング
シルエットはそのまま電柱の上から飛び上がり、宙返りをしながらこちらに近づいてくる。
「…マ、マシンレッド…せん…ぱ…い?!」
押さえつけられたGレッドが呻くように呟く。
Gレッドの目の前に飛び込むと、ビームソードが唸りを上げデーモンウイングを吹き飛ばす。
それはあまりにも素早くGレッドにも何が起こったのかわからないほどだった
「よくやった…主と認めた漢を守ること…それも真の漢の役目よ…」
手を差し出しGレッドを立ち上がらせるマシンレッド
その手を取り立ち上がるGレッドだが、戦友のことを思うと気が気ではなかった。
「あ、ありがとうございます…しかし…ダークナイトが…せ、先輩ッ!」
スッと飛び込んできたあたりを指差すマシンレッド。
ダークナイトに鎌を当てたまま思わず視線をずらすデスウイングだが…その瞬間、横からの衝撃に胴体が薙ぎ払われ倒れこんでしまう
「ムゥ…ナニヤツ?」
翼を広げ、飛び上がったデスウイングの前には真っ白い騎士が立っていた。
2本の剣を構えた騎士はにっこり微笑むとダークナイトに手を差し伸べ立ち上がらせる。
「こんなに一途に守られる姫君…わたくし、ちょっぴりうらやましく思いますわ。
ご無事でしょうか?ダークナイト様…遅くなりまして申し訳ございません…」
「イ、インペリアルナイトか…?」
「主と認めた姫君のためとは言え…こんなに傷ついて…この後はわたくしにお任せください」
羽ばたくデスウイングに向かい狙いを定めるとインペリアルナイトの姿が消え、次の瞬間にはデスウイングの目の前に接近する
右腕に構えたアルファソードがしなやかにデスウイングを捕らえる…が、鎌で受け止められてしまう。
「フッ…ソンナモノ…ヌゥ?」
デスウイングの言葉に微笑んだかと思うと、左腕から伸びたオメガソードが羽ばたく翼を討つ。
片方の翼によけいな力が加わり、回転しながらきりもみ状態で地上に落下するデスウイング
そこに向かって空からインペリアルナイトの声が聞こえた
「…ダークナイト様の痛み…わが主、オロチ様の悲しみ…うけとりなさい!アルファ十字斬りッ!」
十字に真空刃が放たれると落下するデスウイングの背中が十字に裂け、断末魔の叫びが響き渡る
その声にあわせてデーモンウイングとの戦闘も終止符が打たれた。
生き残ったデーモンウイングはちりぢりになって逃げ出し、
コウの側にはGレッドとダークナイト、インペリアルナイトとマシンレッドがそろって上空の赤い瞳を睨みつける。
───ヌ…ヌゥ……余興が過ぎたか…マシンレッドが現れたということはヤツラも一緒か…
仕方ない、今日のところは見逃してやろう…愚かな人間とガチャボーグどもよ…
滅びのときまで暫し猶予をくれてやろう…ウハハハハ
黒く雲に覆われ赤い瞳のあった空は元の青い空に戻り、オロチを包んでいた紫の光の輪も消え去った。
力いっぱい抱きしめながら引っ張っていたために、コウの上に落ちてくるオロチ
「てて…だ、大丈夫か?オロチ…」「コ、コウ…コゥ……うぅ、ぐすっ…」
傷だらけの腕を後ろ手に立ち上がろうとするコウに、たまらずに抱きつくオロチ
アスファルトの上に折り重なるように倒れてしまう二人…オロチはコウの胸に顔をうずめて泣くばかり…
コウも空を見上げてオロチの頭を撫でる
「よかったな…二度も連れ去られなくて…」
ポツリと呟くコウの声に「ぅんっ…うんっ…」とうなづきながらも泣きじゃくるオロチ
先ほどとはうってかわって空は青く澄み切って、雲も優雅に流れている…
──オロチが泣き止むまで、ゆっくりと頭を撫でようかな
「…オロチ、怖かったんだな…いいぞ、もっとたくさん泣いても」
「ぅん…ぅんっ…うぅ……ふぇ…ぐすっ…」
「これからも、守ってやるからな…絶対だ」
「ぅぇぇ…ふぇぇ………ぅん…ぐすっ…ぅんっ…うぅ……」
子供のように泣きじゃくるオロチ。
記憶を無くした彼女のためにも、必ずデスブレンを倒してやる!
傷つきながらも決意を固めるコウだった。
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