■資本主義の犬■
唐突に始まった新コーナー。この『資本主義の犬』は、メーカーさんからソフトを頂いて、それを私がレビューしてユーザーの購入意欲をあおろうという企画だ。
レビュアーとしてのプライドはないのかって?プライドと、タダでソフトを貰うのとどっちを取るかと言われたら、 たとえ犬と呼ばれようがソフトを取るに決まってんだろうがよ。
尻尾ぐらいブンブン振ってやるとも。
(いきなりこんな殺伐とした、身もフタもない前フリを持ってくる時点ですでに失敗しているような気もするが)
■事件は宇宙で起こってるんじゃない! 地球で起きてるんだ!■
で、今回TENKYさんから送っていただいたこの『メルティランサー THE 3rd PLANET』だが、このシリーズは小説化されたりもしているので、皆さんも名前ぐらいは聞いたことがあると思う。名前でわからなくても、ヒロインの金髪ポニーテール少女を見れば、「ああ、アレか」と思い出すのではないだろうか。
↓ こんなの。
・・・レビューしてるのかケンカ売ってるのかどっちだ。
ゲームの舞台は未来の地球。ヒロインたちはGPO(銀河警察機構)に所属する捜査官。まぁ要するに、未開の惑星だった地球もようやく宇宙に進出して銀河連邦の仲間入りをしたために、地球上に派出所みたいなものが設置されたわけですな。ただし宇宙規模の。
で、地球に流れ込んでくる異星人犯罪者と彼女たち“ランサー”との闘いが、このシリーズの主なストーリーだ。
だが、3作目の今回は少し事情が違う(らしい)。GPOとはまた別に、地球人独自の警察機構も存在するのだが、この二つの勢力はお互いいちおう認め合ってはいるものの、いろいろと複雑な関係なのだ。
言ってみれば、『踊る大捜査線』で描かれる “本店” と “所轄” の関係に近いかもしれない。
(もっと適切な例えは『戦後日本とGHQ』なのだが、特に今の時期はいろいろと差し障りがあるので書かない)
そんなワケで、GPOが民間の建物などに被害を出した挙げ句に、犯人を取り逃がそうものなら、そりゃもう在日米軍が車で日本人を轢いたり、少女に暴行したりした時のように、非難の嵐が巻き起こることになる。
・・・軌道修正。もっとも、このゲームに出てくるGPO隊員達はみんな美少女。
正義感あふれる常識的な女の子や、宇宙で広く信仰されているらしいアーカネスト教の司祭や、
異世界から来た魔法少女やマッドサイエンティストに改造された娘や食べることしか頭に無い子供のバイオソルジャーといったメンバーなので信用でき・・・・・
ダメじゃん。
いやでも、みんなイイ子たちですよ。ええ。あともう一人、見習いのパティという女の子もいるのだが、これが『エクセル・サーガ』のハイアットそっくりで、いつ血を吐くかと気になって仕方なかったりするけども。
■士道不覚悟■
そしてもう一方の、地球人側の組織が今作の見どころ。彼らは「至誠館」という武術道場の門人が中心で、その名も特別機動班“維新組”。未来都市で畳を敷いて、床の間に「誠」の旗を飾ったりするナイスな集団だ。
ここまでくれば、わかる人にはわかりますね。モロ新選組です。
そして我らが主人公の名は藤田次郎(ふじた・つぐろう)
彼は、維新組の幹部でありながら、極秘指令を受け名前を変えて
米軍基地GPOに潜入することに。しかも表向きは地球人公安補佐官として、ヒロインたちの上司となり指示を与えつつ、彼女たちが本当に信頼に値するかどうか見極めなければならないのだ。
この藤田のモデルはおそらく新選組三番隊組長、斎藤一だろう。
なにぶん古い昔のことなのでハッキリ断言はできないのだが、彼は新選組の中でも特に多くの暗殺や実戦に関係したらしい。よく知られているのは、伊東甲子太郎一派が新選組から 分離した際のことである。二重スパイ的な立場で彼らの中に潜り込んだ斎藤は、伊東暗殺のお膳立てを整えることになる。その後、新選組に戻った斎藤は、鳥羽伏見の戦で新選組が実質的に離散したあとも会津や西南などの戦地を転々とし、最終的には新政府の下で警部補などを務めたのちに天寿を全うしたとされる。
この間に彼は山口次郎(二郎)、藤田五郎などという何のヒネリもない変名を使ったりしているのだが、平凡な姓と数字の付いた名前から離れられないあたりに人柄がにじみ出ていて微笑ましい(たぶん記録に残っているほかにも、村上三郎とか田中四郎とかいう偽名も使っていたのではないかと思うが、どうか)。
スパイとして敵の信用を得る人間というのは、よほど狡智に長けた表裏のある者か、あるいは全く逆に、周囲がどうあれ愚直なまでにひたすら己の信念だけを貫き続ける男か、どちらかだと思うが、史実などからかすかにうかがい知ることのできる斎藤一という人物像は、どうも後者であるように思われる。
・・・余談が長くなったが、ゲームの藤田次郎も実直で厳格な性格で、懸命に任務を果たそうとするのだが、なにぶん相手はみんな若い女の子たちばかりなので、なんかどんどん仲良くなってしまうんだ、これが。任務を取るか、部下への情を取るか。
個人的には、女などにうつつを抜かさず士道を全うしたいところだが、でも地球サイドの上官にあたる海道とかいうオヤジは、ただのウサン臭いハゲた碇ゲンドウみたいな奴だしなぁ。どっちか選べと言われりゃ、そりゃ女の子を取るよなぁ。人として。
・・・というふうに、主人公は日々襲いかかる事件に追われながらも、二つの勢力の狭間で思い悩むことになるのである。
ちょうど、硬派を自認するゲーマーが、『ときメモ』や『サクラ大戦』にコロリと転んでしまう様子を如実に再現したゲームと言えよう。
■走れ、光速のメルティランサー (←減点100)■
ゲームシステムとしては、根本的には『OSAKA』と同じ時間型シミュレーション。シリーズ前作までとはシステムが一新され、キャラの育成がなくなったらしいが、『OSAKA』のほうをやっていればスンナリと入り込めるはず。プレイヤーは4日を小単位として、部下に任務を振り分け、要人の警護や暴走族の取り締まりなど小さな事件を幾つも解決していくという流れを繰り返す。
そして要所要所で重要なイベントが発生し、一連の大きなストーリーを構成していくという仕組みだ。
また、ただ任務の達成数値に目を配るだけではなく、本作では非番の日などの部下達とのコミュニケーションも重要な意味を持ってくる。ここで会話をしないと発生しないイベントなどもあり、シンプルな作業でサクサク先へ進みながらも、決して退屈ではないシステムに仕上がっている。
あと、特に面白いのが、「出動」というコマンド。これを選択すると、藤田は維新組用の戦闘服と特殊バイザーで武装し、別人として部下たちのピンチに駆けつけることができるのである。
このシーンは、機動刑事ジバンだとか特警ウインスペクターだとかいったあたりを彷彿とさせる凝ったムービーが用意されており、しかも「出動」コマンドを選択するたびに、毎回毎回見せ付けてくれる。
さらにあまり「出動」し過ぎると、部下たちに裏の正体がバレてゲームオーバー。
素薔薇しい。こんなの斎藤一じゃないけど許す。
この手のゲームでは主人公はわりと無色透明な存在と言うのがセオリーだが、あえて主人公に特殊な設定を与え、プレイヤーにより深い決断をさせようとする試みは面白いと思う。
■明日のご飯のために■
TENKYの看板とも言えるこのシリーズ。OVAになったりファンブックが出たりと、これからも発展していくようだ。この時期、懐がうるおっている人も多いだろうが、ホームページでものぞいてきて興味が湧けば、買ってみても損はしないだろう。値段分は充分に遊べると思う。・・・と、社長が泣いて喜びそうなセリフでごまかしてみたが、実はあまりまともなソフト紹介になっていないコトは内緒だ。
しかしまぁ、こういう姿勢から一つの作品を突っ込んでレビューするような記事は商業誌ではまずないので、この企画の意義はあったかもしれない。
というワケで、ソフトをくれるメーカーさん募集中。一本分の投資なんて安いもんだ。
戻 る
▼