先代ヨダレ団長の肖像。“ヨダレ”とは、バカゲー騎士団の長が代々受け継いできた名である。先代の本名は今では伝わっていない。
手にしている旗は、初代団長がゲーム黎明期に、やたらややこしい条件を満たさなければ上に進めない60階建ての塔を外壁をクライミングして攻略した折に、帰り道の土産物屋で定価1000円のところを3本セット2400円にまけてもらって購入したという由緒ある旗である。この旗と先代ヨダレについては、こんな逸話が残されている。
先々代が後継者を決めるため、3人の候補を呼んでこう言った。
「ここに3本の旗がある」「1、2、3……あ、ホントだ」
「見ればわかります」
「旗の数え方って“本”で良かったっけ?」「この旗は、1本だとたやすく敵に折られてしまう。ではどうすればよいか?」
「そりゃもちろん、3本を一つに束ねます」
「3本を分散して配置します。1本を折られようが、そのスキに敵の首を落としてみせましょう」2人はすぐさまそう答えたが、3人目だけは何も言わなかった。
「ん? どうした?」
「いや……って言うか旗ぐらい折られてもいいし。しいて言うんなら、まず自分で3本とも折ります。それなら敵に折られることはない」
たいそう頭の悪い返答であるが、選ばれたのはなんとこの3人目……若き日の先代ヨダレ団長だったという。
後世の解釈では、旗は“誇り”を表すとされている。
そのために犠牲を払うぐらいなら誇りなど潔く自ら捨ててしまえ、というのがバカゲー道なのであろう。
「俺に……おまえを斬れと言うのかッ!?」
「甘えるな。騎士団長としての、おまえの仕事だろうが……!」
ハグハグは、先代ヨダレ団長の親友であった。騎士団員となってからも団長の右腕として大いに活躍するが、踏絵審問により隠れリノア萌えであったことが判明し、処刑される。
彼の首をはねたとき、団長は号泣し、「親友を斬ったこの右手ではニ度とゲームをしない」と誓ったという。
この友情をたたえ、神が授けた神器が、アスキーの片手コントローラL5である。
なお、この絵において先代団長の左に見えているハグハグは、心霊画である。死後も霊体となって騎士団を見守りつづけているのであろう。
それゆえ、副団長の職は今も空位のままなのだ。
頑固にも「ゲームは連打が全てだ」という信念を曲げなかったため、国を追われた元宮廷魔術師。騎士団に参入してからも、幻の「シュウォッチ64」を捜し求め、常に流浪の旅に出ていた。
「古文書にもこう記されておる。たくましい野菜売りの男がシュウォッチ64を世に示し、黄色いハチを救うだろう、と」
しかし彼の旅は、ついに実ることはなかった。
死の寸前、ぼろぼろになって騎士団へと帰りついた彼は、病の床でうわごとのように呟いていたという。
「わしの求めたシュウォッチ64は幻にすぎんかった……。じゃが、わしは見たのじゃ。蜃気楼の向こうに神々しく輝く、取っ手の付いた四角い箱を……」
ノスダーの行為を愚かだと言う人はいるだろう。だがしかし、彼の信念はいまだ「ファイアーエムブレム64」を待ちつづける人々の心の支えとなっているのである。
彼の出生や経歴は謎に包まれている。卿というのは、その風格から付けられたあだ名に過ぎない。彼はある日、ふらりと騎士団を訪れ、挑戦の名乗りを上げた。
副団長ハグハグがこれを受け、両者は激しく数合斬り結んだが、そこでホリ卿はなぜか手を止め、
「貴殿は相当の使い手だ。ここはその腕を預けるに値するほどの場所か?」と問うた。
「値しようがしまいが、ふさわしかろうがふさわしくなかろうが、私はここに居たいのだ」
……その答を聞いたホリ卿は、その日より騎士団の一員となった。
それから数年後。身につけた者を血に飢えた殺人鬼へと変えてしまうという、パックスパワーグローブなる呪われた篭手が世を騒がせていた。
ホリ卿はそのパワーグローブを手に入れ、自らそれを装備した。
そして不屈の精神力で呪いに耐え、己の右手ごとパワーグローブを高熱の炉の中に差し入れ、焼き尽くしたのである。
片手を失ってもなおホリ卿の鬼神の如き強さは衰えず、彼の通った跡に生き残る敵は無いことから「隻腕アトム」と呼ばれるようになったが、本人はすごく嫌がっていた。でもそのうち慣れた。
老いて前線を退いたあとは、パワーグローブの教訓を糧に、正しい周辺機器を広めることに尽力したという。
スペランカー王朝歴256年、日課の剣の素振りを終えて朝食の席についたまま、眠るように安らかに息を引き取る。享年78歳。
インチャネキッド=アクアプラス。始終「やっぱり千鶴さんだよなぁ」「うぐぅ」「エプロンドレスは青に白でないと……」などとばかり言っていた彼は、騎士団内では異端として扱われていた。
先代ヨダレ団長ほか、主だった騎士がスクウェア狂信者の鎮圧に赴いた際、彼だけが城に残されていたのもそのためである。
ところがそこに、団長が城を離れた隙をつき、クソゲー誹謗派のゲリラ部隊が大挙して攻め込んできた。
そのときであった。
アクアプラスは常日頃からは想像も出来ぬほどの鬼気迫る勢いで、コントローラを剣に持ち替え、わずか一騎で敵陣の真っ只中に飛び込んでいった。
そして、自らも致命傷を負いながらもみごと敵将を討ち取り、部隊を撃退したのである。
遠征より帰還した団長らは、愚を装って危急の折にそなえ命と引き換えに城を守り通したアクアプラスの行為に最上の敬意を払い、これまでの己の不明を恥じたという。
城に残って「ときメモ2」で遊んでいたら、花桜梨エンディング目前で敵が城の電源を落としたのでキレただけ、という説もある。
傭兵王、と聞くと傭兵から王に成り上がったというサクセスストーリーを想像してしまうが、彼の場合は困ったことにまったく逆である。とある国の王だったミカカは、良く言っても猪突猛進、悪く言えば短絡的で力押しの政策しか頭になく、内外から不評を買っていた。過去に、形の上では王権主義を廃し民主制を採用してはいたが、実質的に国王ミカカの独裁政権であることに変わりはなかったのである。
あるときミカカ王は国民のプレステすべてに“iモード”というおかしな機械を接続することを義務付け、法外な通信税をむしりとろうとしたが、ここに至ってついに臣下や民衆の不満が爆発し、クーデターにより国を追われてしまったのであった。
全てを失ったミカカにとって、ただ一つ頼れるものは自慢の肉体だけであった。こうして彼は生きるために傭兵となったのである。
しかし、むしろ王よりはこちらのほうが彼の性に合っていたのかもしれない。金や権力への我執を捨て去り、ただ己の生を全うせんがためだけに戦い続けるうちに、ミカカの心は純粋な戦士として磨き抜かれていったのであった。
各地の戦場を渡り歩いていた彼が、騎士団に腰を落ち着けるようになったのには、ひとつのわけがある。とある酒場で偶然に出会った団長と『カルドセプト』の賭け対戦で5万円ほど負けたのである。
そのツケを払うために騎士団と契約したミカカだったが、その後死ぬまで騎士団の傭兵として戦いつづけた。
子供のように無邪気に金と力とを追い求めた人生の果てに、本当に大切なものを見出したのだろうか。
スペランカー王朝歴230年、サクラ大戦α完結編のさなかに名誉の戦死を遂げる。
先代団長が『ギレンの野望 ジオンの系譜』を購入した際に、店員が初回特典のギレン総帥の胸像となぜか間違えて渡したことから、騎士団の秘宝の一つとなる。この石像は、伝説の地、ファニーなゲーマーたちの楽園への道を指し示すと伝えられている。よく移転するし。
他にも、この像に向かって拝むと魚の目が治る、雪の日に笠をかぶせてやると夜中に恩返しに来る、顔にヒゲを描くと昼間から復讐に来る、飲み会のときには待ち合わせ場所に便利、などさまざまな御利益がある。