ファイナルファンタジー X(ダメ)
(注:
例によってネタバレを多少含む上に、それ以外にも世の中には
知らない方がいいことがたくさんあります)
一時閉鎖を宣言してから一週間あまり。
「あぁ、ちゃんと読まれてないな」
「ちゃんと伝わっていないな」
という感想を目にすることは下手にけなされるよりヘコむ出来事だったりしまして、
たとえば数日前に某イタイドルさんから届いたメールに、
「面白いサイトを見つけたよ」 と、このサイトのアドレスが書かれていたのを見たときには、そのまま新幹線に飛び乗り神奈川まで直行して張り倒してやろうかと思ったものです。
そんなこんなで無気力な日々を過ごしているときに、その声は聞こえてきたのでした。
「さあ、立ちなさい。あなたがこのゲームについて書かずして、誰が書くというのです。
信者とアンチ派だけの偏った評価を世にはびこらせておいて良いのですか?」
病院に行って相談してみたところ、それは心因性の幻聴だろうということで落ち着きましたが、しかし私の胸には再びふつふつと情熱の炎がよみがえってきたのでした。
思えば人生において、つまづいたり壁にぶつかったりしたときには必ず、バカゲーがそばに居て支えてくれた気がします。
イヤな人生。
さて、今回の第10作。
原点回帰の第9作に対し、あのVIIIチームの実質上の続編ということで否が応にも期待は高まります。
はたしてその内容はいかに‥‥?
【キャラクター】
●
ティーダ
主人公の名前は自分で決定できます。
命名:
『イケメン』。
このネーミングからわかる通り、私は主人公の容姿に発売前から引きまくっていたのですが、プレイしてみるとなかなか可愛い奴です。
タッキーとかいろいろ言われてましたが、ゲーム中の表情なんかは香取慎吾を思い出しますね。
スコールと違って適度のバカさ加減が場を和ませるというか、主人公の印象だけでゲーム全体の欠点をここまでフォローできるのか、という感じです。
とつぜん過去の回想がフラッシュバックしたり、どうでもいいモノローグを長々と入れたりするところはやっぱりシリーズ恒例ですが。
●
ユウナ
あの 『バカおんな』
と違い、普通すぎてコレといった印象がありません。
ゲーム的にも召喚+回復魔法と定番中の定番。
ちなみに今回も召喚獣には自分で名前を付けられるのですが、ろくに特徴もわからないまま名前入力を強要されると言う、相変わらずの独りよがりっぷりです。
よって私はウィンドウ上の小さな画像を頼りに命名しなければなりませんでした。
結果。「とりさん」 「もえもえさん」
「おうまさん」。
● ワッカ
イケメンを冒険に同行させる直接のキッカケを作った、面倒見のいいアニキ。
ブリッツボールの選手であり、ボールをぶつけて敵を攻撃。もちろん、氷属性のボールや石化効果のあるボールなんかも店で売っているので安心です。
●
ルールー
ワッカと共にユウナをガードするビジュアル系黒魔道士のおねーさん。
えらく胸の谷間を強調していますが、シリコンどころかガンダリウム合金でも入っているんじゃないかと思うほど硬そうです。
書くことこれだけかよ。
●
キマリ
無口な獣人。
どれぐらい無口かと言うと、マジでパーティーに加わってから中盤まで一言も喋らないほどです。
まあ個性付けというにはちょっとやりすぎというか、あとストーリー上の必要が迫ったとたん、何のキッカケも説明もなく普通に喋るようになるのはどうかと。
それから、主人公は初対面でいきなりコイツに襲われるのですが、
「フフフ‥‥キマリがいつも何を考えているのか、私たちにもよくわからないんだ。とっても無口だから」
の一言で片付けるのもどうかと思います。
ちゃんとつないでおけ。
●
アーロン
ヴァッシュとガッツを足して2で割ってオヤジ化したようなデザインが素敵なシブイ剣士。
この人が最初っから知ってることを全部喋ってればもっと簡単にストーリーの謎が解けたような気がしてならないキーパーソン。
●
リュック
いまどきの女の子、というイメージを極端化したようなキャラ。戦闘時のモーションは宇多田をキャプチャーしたようにしか見えません。
コイツがなぜすんなりパーティに加入することになって、そして周囲の皆もそれを自然に受け入れているのか、プレイしていてもサッパリわからなかったのかは私の理解力が不足しているせいですか?
【ストーリー】
とりあえず序盤までの時点ではVIIIほど破綻した部分は感じられなかったのですが、まだ安心はできません。
VIIIも途中まではカッコ良かったしな。
‥‥と思っていたら案の定、今回はさんざん叩かれたVIIIへの反省からか、ひたすら懇切丁寧に伏線を張りまくり、おかげで中盤の初めぐらいで大体ストーリーの全貌が推察できてしまうという結果に。
「ああ、コイツ死ぬな」
と思ったキャラはその10分後ぐらいに機を逃さずイイ感じでお亡くなりになってくれますし、「コイツ悪者だな」
と思ったキャラは何のヒネリもなく悪者という展開で、頭の不自由な方にも安心してお楽しみいただけます。
‥‥だから、なんでそう極端から極端へと飛ぶかなー。
その一方で、主人公がいきなり千年後の世界に飛ばされたり、ちょっと目を離した10秒ぐらいの隙にヒロインがさらわれたことになっていたりと、やっぱりバカゲー臭を感じさせる部分は多いのですが、説明過多のせいでなんとなく納得させられてしまう自分がちょっと怖かったりします。
そして今回のストーリーの核心となる謎。
「また原因は親かよ!」 とか言いたくもなりますが、今回はVIIIのように
「実は忘れていた」 「プレイヤーさえ知らないことが唐突に起こっていた」 とかではなく、ただ単に、まわりの仲間達が色々と大事なことを主人公=プレイヤーには黙って隠しているだけですので、すごくスジが通っていますね!
【マップ】
今作の最大のツッコミどころはココかもしれません。
このFF10にはワールドマップというものがなく、街道を目的地に向かって旅していくというストーリー上、マップの大半は、簡略化して書くとこんな感じです。
〜―〜〜―〜〜〜→
いや、冗談抜きで。
こいつら、一本道ストーリーが好きだからって、とうとうマップまで一本道にしやがりました。
「考えたんですけど、ダンジョンなんて要らないんじゃないですかねぇ?
別れ道なんか作ったって、せっかくのイベントを見てもらうのに時間がかかるだけじゃないッスか。
どうせ複雑なマップ作ったって、最終的にプレイヤーはみんなゴールに着くわけだし、この際ムダは省きましょうよ」
とかいう情景が目に見えるようです
(あまりのショックによる幻覚症状で)。
『里見の謎』
のP.M.L.S.(プログレッシブ・マップ・リンク・システム)
にならい、別れ道というものを排した男らしいこのマップにより、
『マップ上で敵とエンカウントしてレベルアップ → 街に到着 → イベント (主に自動進行でプレイヤーは手出し無用)
』
という流れがより一層ハッキリし、プレイヤーは無理なくストーリーを楽しんだり楽しまなかったりすることが可能です。
それじゃ宝箱からアイテムを入手する楽しみがなくなるんじゃないか、とお考えのあなた、心配はいりません。宝箱はちゃんと一本道の脇に、取ってくれと言わんばかりに置いてありますので。
おまけに店でアイテムを買う手間も省けるようにと、街道を歩いている通行人に話しかけると、
「どうぞこれをお使い下さい」 と揃いも揃って回復アイテムを恵んでくれますので、TVをもう1台とドリームキャストをお持ちの方はますます安心して
『カルドセプト・セカンド』
とかに没頭できます。
某ガイドブックではマップ担当者が、
「モニター段階でも、ワールドマップがないのはどうか、ということはかなり言われましたからね。でもそこだけにこだわって、やっぱりいつまでも古い表現にしがみついているわけにもいかないし(後略)」
とか語っていましたが‥‥いや、そう言われたのは単に現状のマップがすげぇつまらなかったからじゃないかなぁ。
古い表現どうこうではなくて。
て言うか、意見を聞かないんなら何のためのモニタープレイですか。
さらに、実はマップの簡略化は街道だけに留まりません。
途中でヒロインが敵の船にさらわれ、イケメンたちがそこに乗り込むというイベントがあるのですが、さあ船内を探索かと思いきや、甲板上でわざわざボスがお出迎え。
しかもそいつを倒した直後、自力で船内から脱出してくるヒロイン。
まあ、やけに高価なダイジェスト版というのが正直な感想ですが、本編はいつ出るんですか?
【バトル】
さて、RPGの中核をなす戦闘部分‥‥と 作ってる本人たちはあまり思っていないようですが、とにかく今回はレベルという概念がありません。
だからむやみに切り捨てるなよ、そういう大事なところを。
かわりに採用しているのが
“スフィアシステム”
とかいうシロモノでして、要するに一定のアビリティポイントが貯まるごとにスゴロク盤みたいなマップを1マスづつ進んで行き、そこに書かれているパラメータがアップするという‥‥
まあ確かに
「後戻り」 「分岐」 を上手く利用してシステムを使いこなせれば面白くなるかもしれませんが、基本的には
「経験値を稼ぐとレベルアップしてパラメータ上昇」 という単純なシステムをわざわざ複雑怪奇に仕立て上げただけ。
明らかにライトユーザーを視野に入れたストーリー&ムービー指向のこのゲームに、コアなRPGマニアでさえ最初は戸惑うようなシステムを導入して一体どうしようというのでしょうか。
流川と花道ぐらいのチームワークの悪さです。
さらに今作では敵と味方キャラとの相性がおそろしく極端化されています。
空を飛ぶ敵 ← ワッカ |
素早い敵 ← イケメン |
硬い敵 ← アーロン |
たとえばワッカなら一撃で倒せるモンスターでも、イケメンで攻撃しようとすると、相当に鍛え上げていたとしても
半ば強制的に攻撃がミス扱いになるので 倒せません。
そのため、どのキャラクターでどのモンスターを攻撃するか、常に考えて戦わねばなりません。
これがほぼ全てのモンスター、全ての戦闘に当てはまります。
さらに、考えて戦うと言っても、実際は総ポリゴン数の関係やら、動きのモーションが重なって破綻しないようにという配慮などから、あるエリアに出現するモンスターパーティーの構成はせいぜい数種類に固定されているわけで。
つまり最初の1回目で
「どの順番でどの敵を倒せば良いか」
というパターンが確立されてしまえば、あとはただそれを盲目的になぞるだけでOK、ということになります。
これに、前述した微妙な成長システムやランダム要素の少なさ、さらにマップ自体の単調さなどをプラスした上でこのゲームの戦闘を一言で表すと‥‥
解き方のわかっているパズルを延々と解き続ける単調な作業の繰り返し。
同じ単純作業でも、ただボタン連打でも何とか勝てるとかいうのならまだいいのですが、それが出来ない分、近年まれに見る
“かったるい戦闘”
に仕上がっていると思います。切り捨てるならいっそぜんぶ切り捨てて欲しかった。
中心となるべき人が最初に間違ったコンセプトを打ち出してしまうと、誰も途中でやめましょうと言い出せなくて、さらにその上に思いつくままに革新的なシステムを重ねていった結果、肝心のプレイヤーを置き去りにしてしまうという、絵に描いたような失敗例と言えましょう。
唯一の救いは、戦闘中に様々なボイスが入るようになったことでしょうか。
ただ攻撃時の掛け声や呪文だけでなく、ちょっとイベントに絡んだキャラクターどうしの掛け合いなどが隠されていたりして、枯れ果てた荒野に咲いた一輪の花のごとく心を和ませてくれます。
たとえば序盤でワッカがイケメンのことを
「こいつはブリッツは出来ても戦闘はシロウトだぜ」
と言うシーンがあるのですが、その後の戦闘でこの2人を登場させると、
イケメン
「(やる気なさげに) 戦闘のシロウト、登場ッス〜」
ワッカ
「‥‥悪かったよ」
そして戦闘終了後には、
ルールー
「少しはやるじゃない」
イケメン
「まだまだやるッスよ〜」
まあハッキリ言って、大々的にアピールした上にやたら数だけは多かったDQVIIの戦闘中の会話システムよりよほど出来がいいと思います。
て言うかイケメン (主人公) のこの性格が可愛くてなりません。 それだけですが。
‥‥以上、今が旬ということでとりあえず現段階での評価を述べさせていただきましたが、次はこのゲームにおいて最も大きな部分を不法占拠しているグラフィックとムービーについて書きたいと思います。
まあ、なんだかんだでちゃんと買って最後までプレイするところがいいユーザーだねぇ。
我ながら。