今日はちょっと、いわゆる『デザイナーズノート』のようなものをやってみることにする。
よくゲーム誌などでクリエイターが大口を叩いているが、その気持ちが少しわかったような気がする。
ユーザーにしてみれば面白けりゃ別になんでもいいのであって、「○○が斬新だ」とか「××に力を入れた」とかは、自分で言わなきゃ気づいてもらえないもんなぁ。
『バカゲー専科』について様々な御感想をいただいているが、中でもやはり多いのが、「バカゲーを徹底的にやりこんでいる姿勢がいい」というもの。
そういえば後半は作業に追われていて忘れていたのだが、最初に編集部に出した企画のタマゴのことを思い出した。
ご存じの通りこの『バカゲー専科』は、同種の本の中では後発になるため、他との差別化をはかる必要があった。
もともと私は、バカゲーを扱うのに一般ゲームの新作紹介や攻略記事と同種のフォーマットでやる必要はない、むしろやってはいけないと考えていた。そこで打ち出したのが「紀行文的な」というコンセプトである。一般のゲーム記事を実用的な旅行ガイドだとするなら、『バカゲー専科』は筆者の主観をもっと全面に押し出していこう、ということである。
海外を自由に旅行したりすることは、普通の人にはなかなか出来ない。そこで、紀行文や旅行エッセイなどで、まだ行ったことのない所や自分の知らない土地について読んで楽しむのだろう。
ある意味、バカゲーのレビューというものはそれと同じなのではあるまいか。
バカゲーは名作ソフトより当然 数が少なく入手が難しいし、そんな怪しげなソフトに金と時間を費やしてクリアするというのも、一般ユーザーにはなかなか抵抗があることだろう。
ならば、紀行文のように、手軽にバカゲーの楽しさを疑似体験できるような本を作ってやろうじゃないか。
まずゲームを徹底的にやり込み、必要があればエンディングやラスボスもネタにする。紀行文が「詳しいことは現地へ行って確かめて欲しい」では話にならない。それに、私自身も経験があるのだが、バカゲーというものは情報が増えれば増えるほどプレイしてみたくなってくるものだ。
というのがこの企画のおおまかな意図だったわけだが、今のところその狙いはかなり的中しているようである。ただ単にバカゲーを面白おかしく紹介しているだけのように見えても、裏ではこれぐらいの計算は働いているのだ。
いくら対象がB級ゲームだからといって、書き手までいいかげんな気持ちで作るとどうしようもない本が出来上がってしまうからね。書名は出さないけど。
それにしても、あんな 口から出まかせ 一瞬のインスピレーションで成功してしまうなんて、私(白川嘘一郎)はスゴイ! 天才! かっこいい! モテモテ! ファーザー!
・・・はぁ。 やっぱり、後になってからこんな発言するのってカッコ悪いわ。さんざん大きなコト言っておいてけっきょく売れないってのよりはマシだけどさ。
わりといい仕事してたクリエイターが、突然どっか行っちゃう(行き先は田舎・外国・あの世・酒・ドラッグ・宗教・電波の世界など様々)気持ちもわかったような気がする。
12月24日
今日、初めて完成した現物を見る。
・・・スゲェ。
他の御三方の書いた部分は今まで見る機会がなかったのだが、私の予想をさらに上回る見事な出来だ。
宿無彦氏と中村氏の文章! ゾルゲ氏の漫画とハシラ(あと記事も)! そして、ら斎藤(仮名)氏の強烈な表紙!
「笑い死ね」とか「今度のドジョウがいちばん美味い」という挑戦的なキャッチコピーも、あながち大げさではなくなってきた。皆さんありがとう。これでJAROに訴えられずにすみます。
12月25日
・・・などと喜んでいたはいいが、実際に書店で売られていないという現実に直面。
まだこのへんの書店には配本されていないのか、もう売れてしまったのか、それとも最初から仕入れがなかったのか。
いや、そもそも出版はされているのだろうか。ひょっとして本が出るというのは全て真っ赤なウソだったのではないか。編集部や宿無彦氏らがみんなでグルになって私を陥れたのでは。
なんか『はじめに』のページの署名が、「ユーズド・ゲームズ編集部」ではなく「ユーズド・ゲーム編集部」とかいうパチモンみたいな名前になってるし・・・。そうだ。そうに違いない。みんなして私を馬鹿にしているんだクソこんなあたいを笑うがいいさ
妄想中断。
とにかく置いていないものは仕方がないので、方針を転換する。
出版社やタイトルを記したメモを用意した上で、店員に 「『美食倶楽部バカゲー専科』ありますか?」と尋ねて書名を印象づけるというおそろしく地道な営業活動を決行。
タイトルを見た店員は一言。 「料理の本ですか?」
痛。やはりそう来たか。
調べてもらった結果、入荷はしていたようだがもう売れてしまったとのこと。誰が買ったかはしらないが、 ちくしょう先を越しやがって お買い上げありがとうございます。
京都近郊にお住まいの方。この北大路ビブレ4Fの書店にみんなで注文しに行くと、勘違いして大量に平積みしてくれるかもしれない。
12月26日
探しているのに見つからないという方、本当に申し訳ない。
実際のところ、むやみに歩き回って探すより、注文するとか重版希望の意思をKTCのほうに伝えるとかしたほうが確実かも。
私自身 しばらく前に、当時はいまほど知名度が高くなかった『東京魔人学園』の攻略本を手に入れるのにかなり苦労した経験があるので、こう言うのである。
( 『東京魔人学園 剣風帖』・・・・98年6月に発売されたPSの傑作。風水や陰陽道といった伝奇的要素を学園ジュブナイルと見事に融合させ話題を呼んだADVパートと、
徹底的にユーザーフレンドリーを追求しつつも、戦術シミュレーションとして高い完成度を誇るSLGパート、
そして何より、強烈な存在感と個性をもつキャラクターたちの魅力に支えられ、奇跡的なまでの“ゲームとしての面白さ”を体現している。
舞台設定がやや特殊なため敬遠されがちだが、ファイヤーエムブレムやオウガシリーズのファンなら意外とすんなりと入ることが出来るはずだ。
・・・・お世辞おわり。これだけゴマをすっておけば、天下の SHOUT! DESIGNWORKS のこと、スタッフ全員が買ってくれるに違いない。
そのときは推薦文でも送ってください、秋芳監督。 )
我ながらなりふりかまわぬ販促活動を行っているが、こちらとしても一応それなりに人生かかっちゃってるしなぁ。
12月28日
ここまで来たらもう完全に開き直りますが、できればアンケート葉書も送ってください。
重版されたりとか続編が出たりとかは、意外とコレに左右されたりします。「つまらなかった記事」にぜんぶ私の担当ページを書いてくれてもいいから。
それにつけても納得いかないのは、あの『クソゲー白書』がこの本より高いという事実。
これまでは、あの本を買ってしまった被害者として批判を行ってきたわけだが、こうなると同業者としての怒りもわきあがってきたりする。
目の前に両者を置いて中を見比べてみると、この2冊が同じ文化圏で生み出されたということすら信じがたいのに。
『バカゲー専科』は980円。『クソゲー白書』は1300円。
夏目書房の編集者は算数もできない猿だったか、
それとも逆に、最初の第1刷でできるかぎりの金を回収して売り逃げをたくらむというものすごい知能犯だったかどちらかだろう。