『・・・戦って、死ね』

 先日、十年来の戦友の屋敷(アパートだが)で、話題の『ダブルキャスト』を今更ながらプレイした。以下は、そのときの様子である。



ヨダレ「ふむ、なかなか良いゲームじゃないか。アニメシーンが無ければもっと良かったが」

 「いきなり存在を全否定するような感想を述べるな」


 「コマンド選択式ではなく、マウスでクリックするタイプのAVGでフルアニメーションをやったら、かなりスゴイ事になるだろうな」

「当分はまだ技術的に難しいだろうけどね」

 「それにしても、こんなフルアニメソフトと『里見の謎』同じハード上で遊べるとは、いい時代になったものよのう」

「わけのわからない誉めかたをするんじゃねぇよ」

 「それはともかくこの『ダブルキャスト』、お色気や残酷描写も、とてもプレステとは思えない出来だ。《完全な悪事を働きたいのなら、法を作る立場になれ》という格言を思い出してしまった」

「はぁ?」

 「・・・背いた者を罰し、流通を取り仕切り、バックボーンの提供と引換えに利益をピンハネする。国家もマフィアも原理は同じだ。違いは、それが合法であるか否か」

自分で規制した物を自分で売れば、いくらでも儲かるってワケか。そういえば俺がプレイしたところによると、『ダブルキャスト』は胸・尻フェチ、『季節を抱きしめて』は脚フェチの傾向が感じられるぞ」

 「ほう」

「つまりこのシリーズは一作ごとにSMや屍姦などマニアックな方向に走っていくに違いない、というのが俺の予想だ。特に四作目は、あまり売れそうにないのをいいことに、好き勝手やってくれそうな気がするぜ」

 「なるほど。それは楽しみだ」

「ところでお前、TVアニメの『機動戦艦ナデシコ』は見てたか?」

 「ああ、全部合計して7分ほどは」

「キャラクターデザインはあれと同じ人だぞ」

 「なるほど。するとサターンのアレと見比べれば、両者の技術力が(以下略)」

「・・・予算とかコンセプトとかスタッフのやる気とか、いろんなモノが全然違うんだから、比べてやるな」



(数時間経過)


「おい、ヨダレ。さっきから見てると、必ず一枚目のDISKで死んでないか?」

 「なに? もしかして二枚組なのか?

「・・・あのなぁ。頼むから、せめてDISK2までは進めようぜ」



(さらに数時間経過)


「・・・おい。俺は数日がかりでエンディングを十数個見つけたのに、いったいどういうプレイをしたら、何の予備知識も無しに一晩でバッドエンドだけ7つも更新できるんだ?」

 「私の良識と信念に従って行動しただけだが」

「なるほど、それが原因だな。納得のいく理由だ。そういえば、『卒業』を初めてプレイしたときもそうだったよな?」

 「そんな事もあったな」

「初プレイにして、二学期で五人全員退学にさせたのは、俺の知る限りお前だけだ。『卒業』なんだから、せめて卒業式までプレイしろよ」

 「そんな事もあったな。・・・しかし、私が見たのは全部バッドエンドなのか。“やるドラ”なのに主人公が殺られてばかりなのでおかしいと思っていたが」

「言っとくけど、グッドエンドでも主人公が殺るわけじゃないぞ」

 「なに? なぜ殺れないのだ」

「なぜと聞かれてもなぁ。強いて言うなら、お前の頭の中で“やる”という単語の変換が間違っているせいじゃないか?」

 「これだけ何回も殺されたんだから、一回ぐらい殺してもいいだろう。自分を殺そうとしている相手を殺すのは、刑法的にもオールオッケー! これならママも安心さ!」

「主人公がヒロインを殺してどうする」

 「RPGでも、自分の命を狙う悪人は斬り殺してもいいというのは常識ではないか」

「わかった、もういい。そういう“殺るドラ”は、ぜひお前の頭の中でだけ楽しんでくれ。頼むから」

 「つれない奴め。では、達成率も70から90%まで上げたことだし、今日はもう帰るとしよう」

「・・・どうあっても、グッドエンディングを見ないまま一生を終える気だな、お前・・・」






完成度 80
ヨダレとの相性度 5
略称ダスト (チリ・ゴミ・クズを意味する英単語と偶然にも同じだが、気にしてはダメだ)
私的評価 美少女・謎解き・サスペンスの三つを柱としているが、詰め込みすぎてそれぞれの要素が中途半端。
 特に、主人公と美月との心の交流が単なる三流ラブコメのノリで終わってしまっているため、終盤のドラマが薄っぺらくなっているのが残念だ。
 もっとも、このソフトに対してシナリオを論評するのは、レストランに入って皿を食べるようなものなのかもしれない。
もし記憶喪失の美少女と出会ったら どんなに嫌がろうが警察に連れていく。親御さんが心配しているに決まっているからだ。
 相手が怒って立ち去ったとしても、即警察に通報。



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